2018 Fiscal Year Annual Research Report
性的形質の緯度クラインをもたらす性淘汰の環境依存性の解明
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17H04603
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高見 泰興 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (60432358)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 交尾器 / 系統地理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,性的形質の緯度クラインに注目し,性淘汰の環境依存性を通じた生物の多様化機構を解明することを目的とする.性的形質の多様化は,種分化を通じて生物の多様化に寄与しうる点で重要である.しかし,性淘汰による進化に環境が及ぼす影響については,未だ研究例が限られる.本研究では朝鮮半島に分布するツヤオサムシ類の雄交尾器形態の緯度クラインを対象に,現地でのフィールド調査とサンプリングを基盤として研究を行う. 今年度は,2018年6月28日~7月12日に韓国内での調査を行った.申請者に加え,研究補助員1名(神戸大)と,韓国側から1名(江原国立大)が参加した.結果,45調査地点から計185頭のサンプルを得た.現在,これらのサンプルの形態測定を進めている. 同時に,ミトコンドリアND5と核PepCk遺伝子の配列を決定し,これまでのサンプルと合わせて系統地理解析を行った.このために,2019年2月7日~28日に江原国立大の研究協力者を神戸大学に招聘した.解析の結果,朝鮮半島南部のツヤオサムシ類は分化が浅いが,複雑な歴史を持つことが明らかとなった.集団内の多型が十分に固定していないため,集団レベルの歴史を再構築することは難しかった.一方,遺伝子レベルの歴史からは,この地域には少なくとも3回,北方からの異なる系統の侵入があったことが示唆された.一度目は最南端の済州島にまで達する物で,この系統の交尾器形態は比較的単純な物が多いようであった.二度目は半島の南端部までの侵入に留まり,交尾器の肥大化が著しい集団を含んでいた.三度目は半島中西部に限られる物であった.これらの結果は,朝鮮半島に見られる交尾器形態の緯度クラインは,分布域形成の歴史に強く依存していることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各地でのサンプリング,形態の測定,サンガーシーケンスによる解析は順調に進んでいる. サンガーシーケンスによる系統地理解析によって,集団分化の解析にはより高度な手法が必要であることが示唆されたため,今後は予定通り次世代シーケンサーを用いた大規模解析に移行する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
更なるサンプルの充実を目指し,現地での調査を継続して行う. 次世代シーケンサーを用いた解析は,当初RAD-seq法によるとしていたが,過去のサンプルも有効利用するために,MIG-seq法に変更することとした.Mig-seqによって得た大規模データを利用して,集団間の歴史の詳細な解明,遺伝的多様性と集団サイズの定量を行い,仮説検証に必要なデータの蓄積に努める.
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