2018 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアの日本向け野菜類に激発するウイルス病の病原解明と検出法・防除法の確立
Project/Area Number |
17H04617
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
夏秋 知英 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10134264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園田 昌司 宇都宮大学, 農学部, 教授 (00325127)
煉谷 裕太朗 宇都宮大学, 農学部, 助教 (30773551)
山根 健治 宇都宮大学, 農学部, 教授 (60240066)
西川 尚志 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (60361614)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東南アジア / 植物ウイルス / 遺伝子解析 / LAMP法 / タバココナジラミ / ベゴモウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
タイやインドネシアなど東南アジア諸国では、浅漬けやゆで野菜など日本向け加工品の安価な材料となるダイズ(枝豆)、ショウガ、ナス、キュウリなどを栽培している。このような野菜は日本の品種のため、現地の在来種と異なって熱帯で発生するウイルス病に対して抵抗性が全くない。このため、現地では見かけないような激しい病徴を示して減収となり、ひいては材料不足で日本企業が大打撃を受けている。そこで本研究では、東南アジアで栽培している日本向け野菜類の新ウイルス病を取り上げ、1)次世代シーケンサー解析と病原ウイルスの推定、2)感染性クローンによる病原性の確認、3)LAMP法やELISA法による迅速簡易検出法の確立、4)媒介昆虫や伝染環の解明、という手順で研究を遂行し、最終的に現地に適した防除法の確立を目的とする。 本年度は、まずインドネシアとタイのナスのサンプルからは同じTomato yellow leaf curl Kanchanaburi virusを検出し、日本の品種で激しい黄化症状を引き起こすことを見出した。現在、感染性クローンを構築して、日本の品種で激しい黄化症状を示す原因について解析中である。 ウリ類では、Tomato leaf curl New Delhi virusが大発生していて、年々変異していることを解明した。 また、電気のない圃場で約10分ほどでウイルスを検出するLAMP法の開発をめざし、DNAウイルスであるベゴモウイルスに対して有効であることを証明し、論文を投稿した。現在はRNAウイルスに関してその応用を検討している。 さらに、インドネシアで採集したタバココナジラミのバイオタイプを明らかにした上で、合成ピレスロイド剤抵抗性に関わるアミノ酸変異(M918V、L925I)の有無を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は5つの投稿論文が受理され、すでに電子版ではすべて公表されている。いずれもインパクトファクター付きの国際誌であり、当初の計画以上に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の研究期間は3年間を予定しており、平成31年度は最終年度として以下の手順で研究を進める。 1)次世代シーケンサーにより網羅的に塩基配列を解析し、病原ウイルスを推定する。サンプリングには、新たにダイズ(枝豆)とショウガを加える。検出された推定病原ウイルスの感染性クローンを構築し、接種試験により病原性を確認する。 2)得られた塩基配列をもとにプライマーを作製し、通常のPCR 法やLAMP 法での検定法を確立する。特に今年度は、RNAウイルスの検出法を確立する。さらに、外被タンパク質遺伝子の塩基配列から抗原決定基を予想し、ペプチド抗体を作製してELISA 法での検定を検討する。 3)インドネシアで採集するタバココナジラミにおいて、バイオタイプと合成ピレスロイド剤抵抗性に関わる遺伝子変異を個体レベルで調べ、インドネシアの土着タバココナジラミにおける合成ピレスロイド剤抵抗性遺伝子を確認する。さらに、ベゴモウイルス保毒率についても検討する。 4)以上の成果をもとに媒介昆虫やウイルスの伝染環を解明し、防除法を検討する。すなわち、タバココナジラミのバイオタイプを確定し、各種品種への接種により抵抗性品種を探索する。最終的には媒介昆虫の確定による有効な天敵の探索、有効な農薬の散布時期の検定、抵抗性品種の利用による防除効果の検定、といった実験が可能となり、最終的な防除法の確立につながると考える。
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Remarks |
国際誌に発表した5つの論文はすべてガジャマダ大学の教員が著者となっている。
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Research Products
(8 results)