2018 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on the Middle East Respiratory Coronavirus in dromedary camels in Ethiopia
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17H04642
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
白戸 憲也 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (40415477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉對 博 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10355167)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | MERS / MERS-CoV / ヒトコブラクダ / エチオピア |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の成果により、エチオピアのAmibara地域から採取したヒトコブラクダの鼻水から2種類のMERS-CoV全長配列の解読に成功した。大阪大学の神谷亘特任准教授によって開発されたBACベクターを用いたMERS-CoVの組換えウイルス作製系を用い、ベースとなっている中東株であるEMCのSタンパク質配列をAmibara株のSタンパク質配列に入れ替えた組換えウイルスを作製した。これらを用いてウイルス複製の評価を行ったところ、Amibara株のSタンパク質を持つ組換えウイルスはEMCのSタンパク質を持つ組換えウイルスに比べ、複製が低いことが分かった。さらにこれらを用いて、Amibara地域を含むエチオピアAfar地域から採取されたヒトコブラクダ血清、先の論文(Iwata-Yoshikawa et al., J. Virol. 2019)で採取されたEMC株を免疫したマウス血清を用いて中和試験を行ったところ、Amibara株のSタンパク質を持つ組換えウイルスはEMCのSタンパク質を持つ組換えウイルスに比べ、より低い希釈で中和されること、すなわちEMCのSタンパク質よりAmibara株のSタンパク質のほうが中和されやすい、という事が明らかになった。これらのウイルス学的な差が中東とエチオピアでのMERS患者発生率に影響を与えている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で少なくとも中東由来株であるEMCのSタンパク質、エチオピア株であるAmibara株のSタンパク質をもつ組換えウイルスの間で、ウイルス複製効率が異なること、中和反応性が異なることを示せており、これらが中東とエチオピアでMERSのヒトにおける発症率の差にかんれんしている可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
EMC株とAmibara株との間のウイルス複製、中和反応の差はSタンパク質に起因していることが明らかである。両者の間の変異数は11個であるため、これらの変異を導入した組換えウイルスを作製し、どの変異がこれらの違いの原因であるかの究明を行いたい。またエチオピアにおいてはヒトのMERS発症例は明らかに報告されていないが、血清学的調査の報告もない。隣国のケニアでは1000人余りを対象に検査したところ、0.18%が陽性であることが報告されており、共同研究者のDr.Simenewらと協議し、ヒトでの血清学的調査の可能性を探りたい。
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Research Products
(3 results)