2018 Fiscal Year Annual Research Report
バングラデシュにおけるポスト・カラ・アザール皮膚リーシュマニア症新規診断法の検証
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17H04649
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
小林 隆志 大分大学, 医学部, 教授 (30380520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱野 真二郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70294915)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | PKDL / バングラデシュ / 診断技術 / 節足動物媒介感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
バングラデシュでは多くの節足動物媒介感染症が問題となっている。 致命的な疾患である内臓型リーシュマニア症(VL)は、治療による全身症状寛解後に一部の患者がポスト・カラ・アザール皮膚リーシュマニア症(PKDL)を発症する。PKDL患者の皮膚病巣にはL.donovaniが寄生しており感染源となっている。したがってVLの制圧には、PKDLの発症機序を理解し、的確に診断・治療することが不可欠である。 一方、ウイルスによる節足動物媒介感染症としては、チクングニア熱が問題となっている。チクングニア熱は、蚊によって媒介されるチクングニアウイルスによって引き起こされ、日本でも輸入症例があり4類感染症に指定されているにも関わらず、未だ迅速診断キットが存在しない。 本研究では、バングラデシュにおいて、①VL患者のPKDL発症の原因となるリスクファクター(治療薬、免疫関連分子、microRNA発現量の違い、SNP解析等)の集積と解析を行い、②新規迅速診断キット(Dry LAMP)の現地での有用性を検証する。また、③チクングニア熱の新規迅速診断キットも開発しその有用性を検証する。④ジカ熱の増悪化因子の探求を行う。これらによりバングラデシュにおける節足動物媒介感染症の予防法・治療法・診断法の開発に応用する。 PKDLのリスクファクターとしては、患者群において8種類のmicroRNAが上昇し、10種類が減少していたことから、免疫反応、代謝および細胞内シグナル伝達等の関連が示唆された。また、L. donovaniの新規迅速診断キットの開発では、前年に現地での実証試験において安定性が問題となったため新たなプライマーを検討した。一方、共同研究者よりチクングニア熱に対する新規診断法の開発を依頼され、急遽CHIKV-Dry LAMPの開発に取り組み実験室レベルでの試験を重ねた上、現地での実証試験に臨んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①バングラデシュにおけるPKDL患者の検体を用いて、VL患者のPKDL発症の原因となるリスクファクターの集積と解析を行い、PKDL発症患者群において上昇したmicroRNAを8種類、減少したものを10種類同定した。これらの結果は、免疫反応、代謝および細胞内シグナル伝達等の関連を示唆するものである。 ②L. donovaniの新規迅速診断キットの開発では、前年にDry LAMPを現地に持ち込んで行った実証試験において長期間保存したキットの安定性が問題となったため、新たに5種類のプライマーセットを検討したが、未だ改善には至っていない。 ③2017年6月に共同研究者のいるダッカにおいてチクングニア熱が大流行した。これをうけ共同研究者よりチクングニア熱に対する新規診断法の開発を依頼され、急遽CHIKV-Dry LAMPの開発に取り組んだ。2018年度は実験室レベルでの試験を重ねた上、高感度で特異性の高いCHIKV-Dry LAMPの開発に成功した。また、現地での実証試験においても良好な結果が得られた。 ④ジカ熱の増悪化因子を解明するため、アジア株及び、アフリカ株の前駆膜(prM)とエンベロープタンパク(E)を有する1回感染性ウイルス様粒子(SRIPs)を作製し、各種細胞株へ感染実験を行った。その結果、アフリカ株のprM+Eを有するSRIPsの感染性が高いことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
①PKDLのリスクファクターについては、昨年度までの研究に引き続き、PKDL患者検体において免疫抑制性因子(IL-10,IL-27,TGF-β、STAT3,Foxp3)、免疫チェックポイント調節分子(CTLA-4,PD-1,SOCS3)、リーシュマニア原虫の定量的検出、末梢血白血球および皮膚パンチ生検中の宿主免疫関連分子の発現解析、血中サイトカイン、血漿および尿検体中の抗原、抗体等の定量、SNP解析を実施し、PKDL発症率との相関を解析し、PKDL発症の成否を規定する分子を特定する。 ②L. donovaniの新規迅速診断キットの開発については、前年度に引き続き新規プライマーの検討を進めるとともに、バッファーの組成や反応条件を改良し、再びバングラデシュでの実証試験を行う。 ③CHIKV-Dry LAMPについては、研究論文を作成するとともにバングラデシュの共同研究者と社会実装の検討を進める。また、昨年度はファージディスプレイ法によりチクングニアウイルスに対する抗体の作製を試み、少なくとも5種類のVHH抗体を取得する事ができた。そこで今年度は、この抗体を用いたチクングニアウイルスに対するイムノクロマトキットの開発を目指し、ウイルスとの反応性を検証する。 ④前年度にアフリカ株のprM+Eを有するSRIPsの感染性が高いことが明らかになったが、その感染性を規定するアミノ酸の同定を試みる。また、蛍光タンパク質を有するSRIPsを作製し、個体におけるウイルス様粒子の局在を解析し初期感染細胞を明らかにする。
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Research Products
(60 results)
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[Presentation] アニサキス感染におけるIgE誘導機序の解析2019
Author(s)
小林隆志, 飛彈野真也, 水上 一弘, 財津 純可, 草野 耀永, 伊藤 秀幸, Astri Dewayani, 小坂 聡太郎, Benjawan Saechue, 佐知望美, 神山長慶, 村上 和成
Organizer
第88回日本寄生虫学会大会
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[Presentation] Novel inhibitors of Plasmodium falciparum mitochondrial malate:quinone oxidoreductase.2019
Author(s)
Endah D. H, Daniel K. I, Takaya S, Xinying W, Kota M, Rajib A, Yuichi M, Mihoko M, Kazuro S, Tomoyoshi N, Shinjiro H, Kiyoshi K
Organizer
第88回日本寄生虫学会大会
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[Presentation] Development of a rapid and simple reverse transcription loop-mediated isothermal amplification for Chikungunya virus2018
Author(s)
Benjawan Saechue, Naganori Kamiyama, Shinya Hidano, Kaori Noguchi, Yoshiko Gendo, Takashi Ozaki, Akira Sonoda, Haruna Hirise, Nozomi Sachi, Sotaro Ozaka, Takashi Kobayashi,
Organizer
41回日本分子生物学会年会
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[Presentation] アフリカ株とアジア株SRIPsを用いた、ジカウイルスの宿主細胞侵入効率の解析2018
Author(s)
神山長慶, 渡辺 景, Benjawan Saechue, 飛彈野真也, 野口香緒里, 玄同淑子, 尾崎貴士, 園田光, 広瀬 晴奈, 小坂 聡太郎, 佐知望美, 鈴木 亮介, 小林隆志
Organizer
41回日本分子生物学会年会
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[Presentation] Evaluation of safety and efficacy of Leishmania major centrin deleted (LmCen-/-) live attenuated parasites as a prophylactic vaccine against Visceral Leishmaniasis2018
Author(s)
Karmakar S, Dey R, Oliveira F, Ismail N, Zhang W, Hamano S, Matlashewski G, Satoskar A, Kamhawi S, Valenzuela JG., Nakhasi HL
Organizer
ASTMH 67th Annual Meeting
Int'l Joint Research
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[Presentation] Evaluation of real time PCR for diagnosis of Post-kala-azar dermal leishmaniasis (PKDL) in an endemic foci of Bangladesh2018
Author(s)
Ghosh P, Hasnain Md G, Hossain Faria, Khan Md AA, Chowdhury R, Faisal K, Mural MH, Baker J, Nath R, Ghosh D, Maruf S, Haque R, Matlashewsk G, Hamano S, Duthie M, Mondal D
Organizer
ASTMH 67th Annual Meeting
Int'l Joint Research
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