2019 Fiscal Year Annual Research Report
マラリア高度流行地における独自開発デバイスを用いた無症候感染者の診断法の確立
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17H04650
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
橋本 宗明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30407308)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マラリア / 診断機器開発 / アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリア流行地では無症候感染者(繰返しの感染により部分的な免疫の獲得し、低感染状態の感染者)が原虫のドナーになっており、マラリア撲滅のためには無症候感染者の治療による伝播阻止が鍵になる。このような背景から、流行地でのフィールドワークで無症候感染者にも使用可能な迅速かつ易操作な高感度マラリア診断デバイスの開発が望まれている。我々はこれらを可能にし得るデバイス(MCD; Malaria Cell Disc system)を独自に開発した。本研究では罹患率が特に高いマラリア流行地であるケニア ビタ地区において無症候感染者を対象に本デバイスを用いた原虫の高感度検出、種の同定、および薬剤耐性の有無の判定を行い、次世代のマラリア診断法のゴールドスタンダードの確立を目指す。 今年度はMCDのアフリカでの有用性を示す報告をおこなった(Yamamoto T, Hashimoto M* et al, Sci Rep, 2020)。超流行地域であるケニア ビタ地区の274名の無症状者に対して、MCDのマラリア診断の能力評価をおこなった。血液サンプルは、マラリア原虫種の鑑別も可能なnested PCR法をレファレンスとして、感染の有無を判定した。本地域に流布するマラリア原虫は最も致死率が高い熱帯熱マラリア原虫が大部分(90%以上)であった。また、感染者由来の血液サンプルの感染率(パラシテミア)は、血液薄層または厚層塗抹ギムザ染色標本の顕微鏡観察によって決定した。PCRの結果をレファレンスとしたMCDによる診断の感度は100%、特異度は92.8%であり、非常に高い正確性をもって診断可能であることが強く示唆された。一方、本デバイスには安定した赤血球の精製が必須であるが、不十分であることが明らかになった。そこで、アフリカでも使用可能なプッシュカラムを開発することで、安定した赤血球精製が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MCDを用いたマラリア流行地の調査の解析はCovid-19のため不可能であるが、培養マラリアを用いて進めており、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
解析する症例数を増やし、さらに安定した結果を得られるように、改良を続ける予定である。
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