2018 Fiscal Year Annual Research Report
HIV感染児の口腔ケアによるAIDS発症抑制の可能性に関する研究
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17H04658
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菊地 君与 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 講師 (40644737)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安岡 潤子 東京農工大学, 農学部, 特任教授 (90451773)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HIV / 小児 / ランダム化比較試験 / カンボジア / 口腔衛生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではHIV感染児の日常的な口腔ケアが免疫力や全身の健康の改善、さらにAIDS発症の抑制に関係しているかを調べることを目的とする。口腔ケアがAIDS発症の抑制や全身の健康に有効であることが証明できれば、服薬遵守が低くなりがちな小児においても、口腔ケアにより健康状態を改善する可能性を追求する極めて重要な意義を有する。また本研究では児の栄養状態や生活の質にも着目し、疾患が抑えられるだけでなく、口腔ケアがHIV感染児の質的な健康にも寄与するかを合わせて調査する。 本研究の目的を明らかにするためするため、ランダム化比較試験をカンボジア国プノンペンにて実施し、研究開始2年目となる平成30年度は以下のことを実施した。 1.介入開始のための体制準備として、研究プロトコルをTrials誌から出版した。研究プロトコルを出版したことにより、本研究で実施するランダム化比較試験の方法の有効性に一定の評価が下されたこととなる。 2.研究プロトコルに従い介入を開始・実施した。具体的な介入内容は、1)口腔衛生教育のためのセミナー教材の作成、2)国立小児病院の歯科看護師に対する口腔衛生セミナー研修の実施、3)研修後、歯科看護師が介入群に割付けられた小児と保護者に対し、1時間程度のグループ口腔衛生セミナーを実施、4)同様な研修とセミナーを4か月ごとに実施。このセミナーで小児と保護者が口腔ケアの実践を学ぶことで、家庭での口腔ケアが適切に習慣化され、これにより免疫力や全身の健康が改善されるかを調査するための重要なベースとなる。 また、初年度に実施した調査の結果、男児におけるう蝕経験歯数と免疫力を示すCD4値の間に有意な関係があることが示唆された。これは良好な口腔状態が良好な免疫状態に関係することを横断的に示したものであり、本研究でその因果関係を明確にする意義を示唆するものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、平成30年度は介入に関するプロトコル論文を出版し、介入群の小児と保護者に対し定期的に介入を実施した。また、研究に先立ち実施した現状調査のデータから2本の論文を作成し投稿した。関連する研究成果を国際学会においても発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、カンボジアの国立小児病院で、介入群に割付された小児160名とその保護者に対する介入を定期的に実施した。平成30年には以下のことを実施した: 1)口腔ケア教育とフォローアップセミナーの定期的な実施 2)自宅での日常的な口腔ケア これらの介入はあと1年間実施するが、長期にわたることから共同研究機関との緊密な連携が必要である。また、国際誌に投稿済みの2本の論文を出版へと進め、さらにベースライン調査で得られた結果をまとめて論文を作成する。学会でも研究成果を発表していく。 平成32年にはエンドライン調査を実施し、最終的な介入の効果をまとめ研究成果の発表を行う。
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