2019 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニティにおける薬剤耐性菌健康保菌の意義解明と薬剤耐性菌拡散封じ込めの試み
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17H04663
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
平井 到 琉球大学, 医学部, 教授 (00359994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 和文 琉球大学, 医学部, 助教 (70372810)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの研究から東南アジアを含む多くの地域に生活する健常人には第三世代セファロスポリンを分解し、これら細菌による感染症治療を困難にすることから臨床上重要視されている薬剤耐性菌である基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌などの薬剤耐性菌を保菌しているいわゆる健康保菌の実態があることが示されている。特に東南アジアではESBL産生菌の健康保菌率は非常に高く、50%程度以上と観察されている。この健康保菌はESBL産生菌のリザーバーとして機能している可能性もあることから、ESBL産生菌の拡散及び多剤耐性化における健康保菌の意義を明らかにする必要がある。 本年度の実績として以下の点が挙げられる。①2018年にベトナムのハノイ近郊の調査地に居住する対象者600名から新たにESBL産生菌の収集並びに聞き取り調査を行った。対象者から得られた検体より約350菌株(健康保菌率は約60%程度と推察される)のESBL産生菌を分離しその分子微生物学的解析を進めている。特に、健康保菌においてESBL産生菌のリザーバーとして機能している可能性の高い染色体性ESBL遺伝子の特定について解析を進めている。②対象者の健康保菌率と聞き取り調査の項目を検討したところ、調査地に所在する保健事務所へのアクセス、および性別について何らかの関連があることが示された。このことは医療機関とのアクセスに加え日常の家事におけるESBL産生菌伝播の可能性を示唆しているため、より詳細な解析を進めている。③本研究で得られた知見を疫学的介入に反映させるため、ベトナム側カウンターパート期間であるベトナム栄養院、タイビン医科薬科大学並びにベトナム保健省の薬剤耐性菌を統括している部署との話し合いを開始し、どのような介入ができるかについて討議を重ねた。将来的なさらなる共同研究の可能性も含めてさらなる可能性を模索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、当初より調査地、もしくは調査地周辺の医療関連施設から臨床分離株を収集し解析することを目的としていた。この点については、これまでのベトナムの他地域や他国で得られた研究結果から、コミュニティで分離される薬剤耐性菌と医療感染施設から分離される薬剤耐性菌の遺伝学的関連性の有無については推察することができ、必ずしも当該地域から臨床分離株を収集解析する必要はないと考えた。 一方、本課題で行った調査地におけるESBL産生菌保菌率の確認は結果的に、本課題以前に行われていた手指洗浄に関する疫学的介入のフォローアップにも用いることができ、何らかの疫学的介入が健常人の薬剤耐性菌保菌率を低減させることも示唆された。また昨年明らかになった家屋における薬剤耐性菌の動態の一端が明らかとなり、疫学的介入の標的の一つを挙げることができた。さらには、2018年に行った聞き取り調査の解析も進んでおり、地域の保健事務所へのアクセスや性別といった点がESBL産生菌の健康保菌と関連があるとの解析結果を得ている。この点はさらなる詳細な解析が必要なものの、新たな疫学的介入の作用点として対策を講じることが可能になっている。また、具体的な対策とするために、ベトナム側の研究機関や潜在的な協力機関、ベトナム保健省とも討議をすでに開始しており将来的な介入策をベトナム側に提示することは可能と考えられる。以上のことから「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、現在進めている聞き取り調査の解析で得られた解析結果をさらに詳細に解析し、また、同時に分子微生物学的解析をすすめ、ベトナム側の研究者ともメールや面談による討議を進め論文化するとともに、疫学的介入策を立案したい。ベトナム側への渡航については現在流動的な状況であるため安全要件など各種条件が整い次第ベトナムに赴くことを計画している。 また、成果公表の観点から、これまで得られた研究結果については、順次査読付きの国際英文誌に投稿する、国際学会、国内学会において発表するなど行う。
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Research Products
(16 results)