2017 Fiscal Year Annual Research Report
個人に適応する骨導立体音像定位システムの開発とその応用に関する研究
Project/Area Number |
17H04689
|
Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
杉田 泰則 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (30401780)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 骨伝導 / 音像定位 / DPOAE |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,気道伝達特性(外耳道から蝸牛までの伝達特性)と骨導伝達特性(骨導アクチュエータの加振部から蝸牛までの伝達特性)を利用することで骨伝導ヘッドホンによる高い音像定位精度をもつ3次元立体音像定位システムを開発し,それを障害者向け支援システムに応用することを目的としている. 初年度にあたる平成29年度は,歪成分耳音響放射(DPOAE)の利用して,気道伝達特性と骨導伝達特性の差特性を推定する手法を検討し,約10名の被験者に対して,実際に差特性の測定(推定)実験を行った.その結果,約500Hzから10kHzの範囲では差特性の推定が可能であること,また差特性は個人差が大きいことを確認した.さらに,推定した差特性を利用することで,骨導音による音像定位の精度が向上するかを確認するための被験者による定位精度の評価実験を行った.その結果,個人の頭部インパルス応答(HRIR)と気道/骨導伝達特性の差を利用することで,音像定位の精度が約20%向上することを確認した.これにより,検討した差特性の推定手法の有効性が確認された. 一方で,DPOAE信号は非常に微弱であり,また多くのノイズが含まれていることも確認された.その原因として,DPOAE測定装置におけるサウンド・デリバリーチューブの揺れやケーブル類が服などと擦れた際の音などをノイズとして拾っていることが考えられる.気道伝達特性と骨導伝達特性の差特性をより精度よく推定するためには,これらのノイズを高精度で取り除く必要があり,そのための信号処理手法の検討や測定系の物理的な改善が今後も必要である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の主な課題は,気道伝達特性と骨導伝達特性の差特性を推定する手法の構築,及びその推定手法を利用してDPOAEの測定を30名程度に対して行う予定であった.差特性の推定手法に関しては,歪成分耳音響放射(DPOAE)の利用した手法の有効性が確認できており,概ね順調である.一方,DPOAE測定に関しては,測定環境の構築と被験者とのスケジュール調整にやや難航し,実際には15名程度に留まった.そのため,当初の研究計画と照らし合わせるとやや遅れており,予定していた研究会や学会発表が行えていない状況である.
|
Strategy for Future Research Activity |
測定環境については既に整っており,今後は計画的にDPOAE測定を行える見込みである.したがって,被験者数を増やし,平成29年度に検討した推定手法の有効性・妥当性をさらに詳しく検証する.また個人の差特性と他人の差特性(あるいは平均化した差特性)を用いた場合で,定位の精度にどのような影響があるかを検証・明らかにする予定である.
|