2017 Fiscal Year Annual Research Report
外洋性魚類・鯨類を指標とした北西太平洋における水銀安定同位体比の三次元分布解析
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17H04712
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
板井 啓明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60554467)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水銀 / 北太平洋 / 安定同位体比 / 海洋生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は、生物試料中の安定同位体比分析法の確立、マイクロ波酸分解+パージ&トラップ法の設計、水銀分析の国際インターキャリブレーションへの参加などを計画し、これらはすべて順調に実施された。国際インターキャリブレーションでは、地中海3地点における水銀・メチル水銀の定量値を、国立水俣病総合研究センターの丸本博士と共同でデータ提供した。このクルーズにはフランスを中心に、米国、スロベニア、ドイツ、韓国の研究者らが参画し、世界の水銀研究コミュニティとの連携を深めるうえで重要な機会となった。 また、北西太平洋の外洋性魚類、鯨類、サメ類の同位体分析についても、一部の外洋魚について総水銀濃度、微量元素濃度、窒素・炭素安定同位体比と水銀安定同位体比のデータを得ることができた。これらの成果については環境化学関連で最大の国際会議であるSociety of Enivironmental Toxicology and Chemistry (SETAC) 、で招待講演を受けた。 上記のほか、外洋魚への水銀濃縮性を定量的に評価するため、マスバランスモデルの構築と、未知パラメータの推定法にバイオロギングデータを用いる手法を検討した。この手法で、黒潮ー親潮混合域のカツオについて、その水銀濃度をかなりよく再現することができた。 研究基盤整備については、還元気化装置を接続したマルチコレクタ型ICP質量分析計の試験により、国際標準試料NIST3133およびNIST8610について、十分な精度で測定できることが確認できた。加え、新規に導入した還元気化型水銀分析装置の改良と高精度化を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、水銀安定同位体比分析環境を整えるため、国立水俣病総合研究センターに設置されたMC-ICP-MSを利用して、還元気化装置を接続した条件での分析条件の最適化を進めてきた。国際標準試料が十分な感度、精度で測定できることを確かめたが、9月1日より東京大学大学院理学系研究科への移籍することになり、新しく実験環境を整える必要が生じた。MC-ICP-MSは同一の機械が東大にも設置されているため、それまでに進めてきた試験を継続して実施することはできた。一方で、研究環境の整備には時間を要したため、天然試料の分析は予定通り進まなかった。そのため、経費の一部を繰り越して30年度序盤にも天然試料の分析を継続した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間全体ではサブテーマとしてS0(分析法開発)、S1(外洋魚の水銀安定同位体比測定)、S2(鯨類の代謝に伴う同位体分別の試験)、S3(栄養段階の変化に伴う同位体分別の評価)を設定し、30年度中にサブテーマ1の完成と2への着手が当初予定であった。29年度は予定よりやや遅れたが、大学院生の加入などデータ産生を進めやすい体制は整ったので、30年度は予定通りの目標を達成したいと考えている。S0、S1に関連する論文執筆も計画している。
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Research Products
(3 results)