2018 Fiscal Year Annual Research Report
活性汚泥というブラックボックスの解剖と再構築:遺伝子発現から群中の個の挙動を見る
Project/Area Number |
17H04716
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 由也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80711291)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 活性汚泥 / 微生物生態系 / メタトランスクリプトーム解析 / 捕食性細菌 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では100年以上水処理に利用されてきた微生物集団「活性汚泥」を対象に扱っている。活性汚泥は数千種以上の微生物で構成される複雑なコミュニティであるため、多様な微生物が介在する水処理メカニズムは未解明の部分が多く、その複雑性は予期せぬトラブルの原因にもなっている。本研究ではこのブラックボックス解消を目的に掲げる。はじめに活性汚泥の網羅的解析を通して系内で鍵となる微生物を選別し、次にそれらを構成員とするシンプルな人工活性汚泥を構築することで、活性汚泥の機能が成立するために本質的に必要となる条件の解明に挑む。 本年度は当初の計画通り、実廃水処理場の各種活性汚泥を網羅的に解析(16S rRNA遺伝子に基づく微生物群集構造解析、メタトランスクリプトーム解析、メタゲノム解析等)することにより、一般生活廃水の処理に重要な複数の微生物を、昨年度よりさらに詳細に明らかにすることができた。また、系内で増えすぎた活性汚泥(余剰汚泥)の減容に寄与する微生物についても昨年度に引き続き解析を進め、活性汚泥における捕食性細菌群の重要な役割を解明している。 さらに、当初の計画通り、初年度の研究成果により重要な役割を担うことが明らかになった複数の微生物種の取得および培養実験を行った。個々の培養実験の結果から、取扱の容易さを重要な基準としてさらなる微生物の絞り込みを行い、共培養実験により生態系の安定性を検証している。 また、得られた研究成果についても、学会発表、総説の寄稿、学術誌での発表等を通して積極的に発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、実廃水処理場の複数のプロセスから採取した活性汚泥を対象に、初年度に引き続き網羅的な解析を行い、系内で重要な働きをする微生物の情報を得ることができた。また、それらの情報をもとに複数種の微生物を選抜して共培養実験に着手しており、当初の計画通り研究が進行している。得られた成果についても積極的に発表を行っており、進捗状況は「おおむね順調」であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
特に実験計画についての変更はない。今後も活性汚泥の網羅的な解析および評価を続けながら、選抜した複数種による共培養実験を行い、人工的な微生物生態系について安定性の検証を進める予定である。
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