2019 Fiscal Year Annual Research Report
内耳増幅の超分子メカニズム解明を目指した膜タンパク質操作・計測技術と新機能の創生
Project/Area Number |
17H04739
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
村越 道生 金沢大学, フロンティア工学系, 准教授 (70570901)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | プレスチン / 外有毛細胞 / 内耳 / 聴覚 / タンパク質モーター / 原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,内耳の感覚細胞に発現する“プレスチン(prestin)”に着目し,その構造と機能を自在に制御する技術とこれを捉える計測技術の開発に取り組むことで,音受容メカニズムの解明及びそのユニークな機能を応用した新機能(ナノバイオデバイス)の創生を目指す.この目標達成に向け,(1)「膜タンパク質発現・精製(採る)」,(2)「電気-機械変換誘導(動かす)」,(3)「分子構造可視化(見る)」,(4)「デバイス化(創る)」の4つの達成目標を設定した. 本年度は研究代表者の異動に伴い,実験環境の整備に約半年の時間を要したために全体計画に大幅な遅れが生じた.10月末より実験ができるようになり,まず(1)「膜タンパク質発現・精製(採る)」について,昨年度までに,EF1αプロモーター系細胞株を12クローン,CMVプロモーター系細胞株を5クローン作製した.昨年度に引き続いてEF1α系およびCMV系それぞれ1種類のクローンについてSDS-PAGE/ウェスタンブロッティングによってタンパク質レベルで発現確認を実施した.その結果,CMV系よりも,EF1α系のほうがより高発現である可能性が示唆された.今後,残りのクローン(EF1α:7クローン,CMV:4クローン)についても確認を行う計画である.さらに,これらの系について電気生理学的手法による機能評価を進めていく計画である. (2)「電気-機械変換誘導(動かす)」および(3)「分子構造可視化(見る)」について,飽和脂質であるジパルミトイル・フォスファチジルコリン(DPPC)および不飽和脂質であるジオレオイル・フォスファチジルコリン(DOPC)を用いた混合脂質(二成分系)二重膜を作製し,脂質ドメイン構造の構築を試みる.作製した脂質二重膜に精製したプレスチン分子を再構成することで,外有毛細胞の細胞膜構造を模したラフトモデルを作製する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
異動に伴う実験環境整備が遅れたために,研究計画に大幅な遅れを生じている.昨年度未了であった,SDS-PAGE/ウェスタンブロッティングによるタンパク質の発現量確認については,ほぼ完了しており,来年度は限られた残りの期間で最大限の成果を出すべく取り組む.
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究室移転により,大幅に計画が遅れている.Prestin発現株におけるタンパク質の発現量の定量化については計画していた実験の8割が完了しており最終段階にある.来年度の中頃までに結果を得る予定である.また今年度いくつかのマーカーペプチドの付加を試みてきたが,Hisタグを付加したprestin発現細胞株ができつつある.本年度はprestinの精製・抽出の高効率化に取り組む.超音波破砕と超遠心機を用いた細胞膜各分の回収効率の向上を図り,またHisタグによる精製方法の至適条件について検討を進めることで,prestinの精製法確立を目指す.(2)「電気-機械変換誘導(動かす)」に向け,グラミシジン(モデルイオンチャネル)を用いて平面パッチクランプシステムの性能試験を実施し,その後人工脂質膜に再構成した精製prestinに対し構造変化の誘起と非線形膜容量の計測を同時に行うことで,活性を持って構造変化を示すことを確認する.この機能評価は本研究において重要な技術開発である.さらに(3)分子構造可視化(見る)に向け,同サンプルを原子間力顕微鏡で観察することでその分子構造の詳細観察に取り組む.国内外の原子間力顕微鏡研究者の協力を得ることで計画を加速して進めていきたいと考えている.
|
Research Products
(6 results)