2017 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍内でステルス性を速やかに解除しナノ粒子の腫瘍集積を積極化する革新的シェル分子
Project/Area Number |
17H04743
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
武元 宏泰 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (10709249)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 薬物送達システム / 高分子 / バイオマテリアル / 刺激応答材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、正常組織と腫瘍組織との差異を鋭敏に認識し、腫瘍組織内では速やかなステルス性の解除・ポリカチオンへの変貌によりナノ粒子のがん細胞への取り込みを積極化する新規シェル分子の開発である。平成29年度では、カルボン酸ベタイン由来のポリアミノ酸ベタインを合成し、そのpH応答挙動を確認した。結果として、正常組織内pHでは中性だが、腫瘍組織内pHではカチオン性となることが明らかとなった。次に、培養細胞に対するポリアミノ酸ベタイン単体の相互作用、生体適合性を評価した。腫瘍内pH依存的に細胞取り込み量が上昇し、目立った毒性も確認されなかった。さらに、ポリアミノ酸ベタインを量子ドット表面に導入することで、シェル分子として用いた際の細胞取り込み量・速度への寄与とpHとの相関を評価した。ポリマー単体と同様の傾向が得られたことから、ナノ粒子表面でもポリマーが挙動を維持していることを確認した。そして、担がんマウスにおける体内動態評価(正常組織・腫瘍組織への集積量評価)及び腫瘍組織での細胞内取り込み評価を行なった。この際に、電荷が常に中性のベタイン分子で被覆した系をコントロールとして用いた。すると、常に中性のベタイン分子で被覆した系と同等の血中滞留性や正常組織への集積性を示した。さらに、腫瘍への集積量は、常に中性のベタインの系に比べて3倍だった。腫瘍組織において電荷がカチオン性へと切り替わる構造を開発することで、腫瘍組織への集積能を向上できることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルボン酸ベタインの系において、腫瘍内pHに応答して電荷が切り替わる高分子の開発に成功した。それは腫瘍内pHにおいてカチオン性を帯びるため、細胞表面の糖等のアニオン性分子との相互作用を促す。結果として、それが腫瘍集積へ有効であることも実証された。当該結果は特許出願および論文発表として結実した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ベタイン構造と生体分子との相互作用に関する究明を進める。カルボン酸ベタイン内において、カチオン性部位とアニオン性部位との距離やそのイオン性基の検討に注力する。とりわけ、pH応答性はベタイン内の分子構造と深く関わるため、それに関する洞察を進めていく。
|
Research Products
(4 results)