2018 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍内でステルス性を速やかに解除しナノ粒子の腫瘍集積を積極化する革新的シェル分子
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17H04743
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
武元 宏泰 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (10709249)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 薬物送達システム / 高分子 / バイオマテリアル / 刺激応答材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、正常組織と腫瘍組織との差異を鋭敏に認識し、腫瘍組織内では速やかなステルス性の解除・ポリカチオンへの変貌によりナノ粒子のがん細胞への取り込みを積極化する新規シェル分子の開発である。前年度までに、ポリアミノ酸由来のカルボン酸ベタインの開発に成功し、それがpH応答挙動を有しており、腫瘍組織へのナノ粒子集積が向上することを明らかとしている。今年度では、ナノ粒子表面へのシェル分子の導入密度を変更し、その血液動態や臓器分布を調査した。すると、導入密度の増加に応じて血中滞留性が向上し、理論上の最大密度において最も良い血中滞留性を示した。その血中滞留性は、既存の高分子のシステムを明らかに凌駕するものであり、卓越したantifouling能を有していることが示唆されている。その際に、肝臓や脾臓への集積は大幅に抑えられており、極めて高いステルス性を獲得可能であることがわかった。また、異なるナノ粒子を用いた際にも、前年度と同様に卓越した腫瘍集積性は維持されており、開発された新規シェル分子の機能は確実なものとなった。興味深いことに、腫瘍組織切片を取得することによりナノ粒子の腫瘍内分布を観察すると、血管に近い領域に比較してより酸性度の高い腫瘍深部の領域にナノ粒子が集積することが明らかとなった。このことから、開発したシェル分子は、腫瘍組織への集積量増大だけでなく、腫瘍組織内分布をも制御可能とすることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発したカルボン酸ベタインを被覆したナノ粒子において、被覆密度と体内動態との相関が明らかとなった。さらに、腫瘍内分布においては既存の高分子シェルと異なる挙動を示しており、より深部への送達を可能とする可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
カルボン酸ベタインに関してだけでなく、他のアニオン性基を有するベタイン構造に関しても知見を深めていく。例えば、スルホン酸ベタインとカルボン酸ベタインでの水和の差異はantifouling能の差異を見出し、最適なシェル分子の開発を推進する。
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Research Products
(6 results)