2019 Fiscal Year Annual Research Report
メカノスペクトル多次元分子解析システムと高精度前立腺癌診断法の創生
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17H04746
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
浮田 芳昭 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40578100)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 分子引張試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は微粒子が抗体結合基板に対して非特異的に吸着する問題の解明を中心に取り組んだ。この取り掛かりとしてDLVO理論を軸として現象を理解する実験を行った。具体的には塩強度とpHを中心として、物理化学的なパラメーターをチューニングすることにより、物理吸着の現象がどのように変化するかを調べて行った。この結果、リン酸緩衝液は免疫反応に広く用いられるが、特に免疫反応が生じない系でも微粒子の吸着が多量に見られることがわかった。次に、同様の基板とビーズのセットに置いて、超純水を用いて実験を行ったところ、非特異的な吸着がほぼなくなることがわかった。これは高塩強度の溶媒を用いることにより、固相表面へのイオンの吸着により電気的に中和されファンデルワールス力による物理的相互作用(引力)が顕著になることを示唆している。これにより、塩強度やpHを適切にチューニングすることにより、免疫反応のための適切なナノ力学場の制御が可能であることが示唆された。 上記の実験とともに、ビーズへの遠心力印加方向についても検討を行った。このために、現有装置の基板保持機構の改良等を行った。垂直方向と水平方向への遠心力印加により傾向の違いが認められたため、今後この違いが生じる理屈を考えていく必要がある。 また、垂直引張試験に置いては、光学系の配置を変更する必要があったため、このための専用架台を開発するとともに、本学ものづくり教育実践センターとの連携によってマイコンによる同期撮影系の開発も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハイスループットな分子引張試験実験手法は概ね完成しており、順調に進展している。物理吸着という当初想定していなかった問題が判明したものの、この原因の解明は順調に進められており、今後計画通りに生体分子間の相互作用を計測する実験に進むことができると見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
物理吸着の起源はおおよそ理解されたため、2019年に確立された手法を基盤として、実験系の拡張に取り組んでいく。具体的には、基板への官能基や生体分子の導入によるナノ力学場への影響を把握することが最も重要である。一方、pHと塩強度を同時に適切に調整可能な溶媒の開発も概ね完了しており、生体分子間相互作用の計測はすぐにでも開始できる見込みである。今後、これらの実験を中心に進めつつ、新規の計測装置の開発も並行して進めることで、研究を加速していく計画である。
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