2017 Fiscal Year Annual Research Report
立体構造と発現スクリーニングに立脚した非天然型酵素反応の創出
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17H04763
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
淡川 孝義 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (80609834)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テルペンインドールアルカロイド / 生合成酵素 / X線結晶構造解析 / 反応解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然からの新規化合物単離数が減少の一途にある現在、酵素反応を用いた新規化合物創成の手法は興味深い。本研究では酵素の立体構造を元に変異を導入し、スクリーニングによって非天然型基質を受け入れる変異酵素を創出する。対象として、テルペンインドールアルカロイドの一群であるテレオシジン類に注目し、その生合成酵素の基質特異性、反応性の改変を目的として研究を行う。テレオシジンBは細胞内のシグナル伝達に関わるprotein kinase Cを活性化する生理活性を持つため、酵素反応をエンジニアリングし、その基本骨格を作り替えることによって、有用な医薬品シード化合物の創出が期待される。 本年度は特にテレオシジン生合成に関わる酸化酵素TleBとそのホモログに注目して、その構造機能解析を行い、変異実験を行う基盤を構築した。まず、希少放線菌Streptoalloteichus hindustanusよりTleBホモログであるHinC(identity57%)、HinD(identity58%)、TleAとは異なりフェニルアラニンを選択する基質特異性を持つAドメインを持つNRPSを含む遺伝子クラスターを見出した。そこで、HinC, HinDはTleBと異なる基質特異性や反応性を持つことが予想された。そこで、HinC、HinDをin vitro反応に供して、その基質特異性を解析した結果、HinDはTleBの受け入れないフェニルアラニルトリプトファノールを受け入れC-N結合を形成、HinCは水酸基の導入を行うことが明らかとなった。これらP450 酵素の構造比較はその基質認識や反応性を調べる上で興味深いため、その結晶構造解析を行い、HinCアポ体を2.45A, HinDアポ体を2.30A で回折データを取得した。現在、その基質複合体結晶の取得を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基質特異性が類似し、反応性が異なる生合成酵素TleB, HinCDの反応解析を行い、そのアポ体の構造解析を行った。基質であるトリプトファノールを含むジペプチドの合成スキームを確立したため、これをもとにさらなる多様な側鎖構造を持つペプチド基質を合成し、新規化合物の生成につなげていくことができる。すでに、メチルアミノ基がチオールへと変換された基質や、立体の異なる基質の合成を完了しており、これらを用いて反応が進行することも確認している。今後、HinCD基質複合体の構造機能解析を行い、基質特異性や反応性の比較を行うことで、酵素の反応改変につながる知見が得られ、これを元に新規反応を触媒する変異酵素を創出することが可能となる。アポ体の結晶条件を元に、これら複合体の結晶構造解析は比較的容易に達成できるものと思われ、これらおおむね順調に進展していると判断する理由となった。非リボソームペプチド合成酵素のTleAやプレニル基転移酵素HinE、機能未知の酸化酵素HinFやカルシウム結合型酵素HinGの発現系の構築を終えており、今後機能解析や、変異実験の準備が順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られているP450酸化酵素HInCDタンパク質結晶に基質をソーキングし、X線照射を行うことで、基質複合体構造の取得を目指す。HinBCD含有クラスターの、異種ホストでの遺伝子発現やin vitro反応解析を行い、各生合成ステップの解明を行う。クラスター中のテレオシジン生合成酵素ホモログの反応を明らかにし、その構造情報を含めた精密機能解析を行うことで、基質特異性、反応性の解明につながる知見を取得し、これらの比較によって、変異酵素を創出するための知見を取得する。特にP450, NRPS, プレニル基転移酵素に注目し、それぞれの立体構造を元に変異導入位置を決定し、それらに飽和変異を導入することで、非天然型の化合物合成に関わる変異酵素の作製を行う。変異酵素を微生物ホストin vivoにて発現し、物質生産を行うことで、改変反応を触媒する酵素を見出すとともに、高収量の物質生産系を構築する。P450酸化酵素については、チオール導入基質、立体の異なる基質を用いて反応することで、非天然型骨格を触媒する酵素を創出する。
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Research Products
(15 results)