2018 Fiscal Year Annual Research Report
精神分析理論をもとにした『狂気と創造性』の問いをめぐる包括的な思想史的研究
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17H04769
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 卓也 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (90782566)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 病跡学 / 狂気 / 創造性 / 自閉症 / ラカン / ドゥルーズ / ハイデガー / 統合失調症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、16H06876「「狂気と創造性」の問いをジャック・ラカンの精神分析理論をもとに発展させる試み」を発展・継承するものであり、これまで行ってきたマルティン・ハイデガーのヘルダーリン論にみられる狂気と詩作の関係についての研究、およびジル・ドゥルーズにおける狂気と創造性の関係についての研究を、今年度は精神分析思想をもとにした思想史の視角からまとめることができた。 まず、西洋思想史において「狂気と創造性」の問題を扱うにあたって避けて通ることはできない狂気の詩人ヘルダーリンについての精神分析的な観点からの検討を昨年日本ラカン協会で発表したものをさらにブラッシュアップしたものが、日本病跡学雑誌に掲載された(松本卓也「ヘルダーリンの狂気はいかに論じられてきたか? 病跡学とフランス現代思想」、日本病跡学雑誌 (96) 50-67 2018年)。この論文のなかでは、ヘルダーリンの詩や哲学的断片が統合失調症という病と関連をもち、後のハイデガー、ラカン、ラプランシュ、フーコー、デリダなどの「狂気と創造性」について論じた思想家たちに大きな影響を与えたことを明らかにした。さらに、この一連の研究を、『創造と狂気の歴史 プラトンからドゥルーズまで』(講談社)という単著として出版した。その他、「狂気と創造性」のテーマについての検討をフランツ・ファノンについても適用する学会発表を大学院生と共同で行った。 今年度の補助金は、主として上記の研究を遂行するための各種文献の購入費、および情報収集のための出張費、作業の補助を行う研究員の給与、および本研究テーマをより深めるための対談者に対する謝金に当てられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従って、関連する一つの単著を完成・出版することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、本研究をさらに学会発表や論文発表、講演会などを通じて深めるとともに、国際発信していくことを試みる。2019年7月に開催される日本病跡学会でも本研究に関連するテーマでの研究発表を行う。さらに、本年度中に、海外(特にフランス)の精神分析やアートに関する研究者とのディスカッションの機会を設ける予定である。また、本研究の成果を一般に向けて発信していく方策についても、書籍やインターネットなどを含め、十分に検討するように心がける。
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