2019 Fiscal Year Annual Research Report
construction of sounding bodies after post digital
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17H04772
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
城 一裕 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (80558122)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メディア芸術 / パーソナル・ファブリケーション / 聴覚文化論 / バイオアート / メディア考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年目となる本年度は,初年度,次年度の研究成果を踏まえ以下の研究を実施した。その主な成果は以下の通りである.「ポストデジタル以降の音を生み出す構造の構築」として A.機械,B.電磁気,C.生物,という3つの領域を対象に, A. 《予め吹き込まれた音響のないレコード》に関わる試みとして,陶芸家との協同のもと,その素材として磁器を選び,数千年は保存できることが歴史によって担保されている音の記述を実現した.あわせて,大型レーザーカッターによる演奏エリアの拡張をおこない,卓上にとどまらない大規模なスケールでの音生成の可能性を確認した.さらに以上の成果を踏まえ,作品《皿》,《線 (可逆的な)》 を制作し,福岡県立美術館で開催された「おとない -Sound/Visit-」展(2020.1.15~1.19)に出展した。 B. 電気信号としての音の生成に関わる試みとして電磁誘導に着目し,印刷物の濃淡から磁界変動を検出することで,任意の音声波形を電磁ピックアップと磁界の変動により生成することを可能とした.この音を発する印刷物,という新たな手法に基づき,海外共同研究者と作品《Mary Had a Little Lamb》を共同制作し,その成果を学術論文として取りまとめた[Jo, DeMarinis, 2020]。 C.前年度に引き続き,イカの色素胞を用いた音声信号の可視化の試みを実施する[Yokokawa, Jo, 2019]と共に,第4の素子として知られるメモリスタを植物(アロエベラ)を用いて制作し,別途修復作業を行ったアナログ・シンセサイザー(Roland SYSTEM-700)と組み合わせることで,生物由来の音響生成モジュールとして,演奏の場で活用した[Nishida, Jo, 2020]。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究結果を踏まえ,A.機械,B.電磁気,C.生物,という3つの領域を対象にそれぞれ新たな試みを実施し,一定の成果を生み出すことが出来ている。また,研究計画内に記している D. 既存の音を生み出す楽器・装置との比較,E. 展示・演奏の場における活用,F. 他の作家・ 研究者との定期的な対話についても着実に実施できていることから,総合的に当該の進捗状況とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては,これまでの成果を学術論文として取りまとめていく他,さらなる研究の発展に向けて,新たな研究領域の開拓につながる実験的な試みを実施する予定であるが,COVID-19の状況によっては,その計画の見直しや成果を発表する学会などの中止・延期も予想されるため,場合によっては補助事業期間の延長も視野に入れ研究を進めていく。
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