2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H04787
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 謙介 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (20583793)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 再現性 / ベイズ統計 / モデリング / 二次分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,ベイズ統計モデリングを柱とする統計的アプローチによって心理学における種々の二次データの再分析を行う。再現性の評価において従来以上にモデルが積極的役割を果たすようにすることを通して,心理学研究の再現性の向上,および理論化の促進に貢献することを目指している。 今年度は,第一に,国際教育到達度評価学会(IEA)が国際共同研究調査として行い,公開している国際数学・理科教育動向調査2007年版(TIMSS 2007)データについての再分析をおこなった。先行研究では基本的な項目反応モデルと,仮定の強い古典的な認知診断モデルによる分析しか行われていなかったが,本研究ではより現実的な構造を持つ新しい認知診断モデリングによって再分析した。その結果,各国のデータについて,今回のアプローチで利用したモデル,中でも主効果モデルによって,本データの構造をより適切に捉えられることが様々な指標から示された。本研究成果はYamaguchi & Okada (2018)として出版された。 第二に,ヨーロッパで行われた健康に関する大規模縦断調査であるSHARE プロジェクトのデータについて,反応スタイルを考慮した統計モデリングによる再分析を行った。とくに本研究では,移動性,認知,息切れの3つの対象を測定する項目について分析した。結果として,反応スタイルの集団での共通性と個人差を,多次元項目反応モデルの拡張によって理解しやすく表現できた。本研究成果は北條・岡田 (2018)として出版された。 これらの主要な査読付き論文に加え,再現性の問題を受けて米国統計学会が出した声明を解説する岡田(2017)を執筆した。また,ベイズ統計モデリングに関する,行動数理研究会と日本テスト学会講演会での2件の招待講演を行った。このほか,国内外の学会において,より速報性の高い研究成果などについても発表を行い,議論を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度末における研究代表者の異動に伴い,一部研究費の翌年度への繰り越しを行ったが,研究課題自体は順調に進めることができており,実際に査読付き論文や招待講演,学会発表等の形によって研究成果を発表することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
心理学研究の再現性は注目を集めているテーマであり,本年度も,国際学会における新たな研究発表のフレームワークの提案や,論文誌における特集号の計画など,いろいろな新しい動きがあった。こうした新しい展開や情報を積極的に本研究課題にも取り入れ,望ましい研究のあり方を模索しながら,当初の研究目的が達成できるように引き続き研究を推進していく。
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Research Products
(14 results)