2019 Fiscal Year Annual Research Report
視線と脳活動の同時計測による思考過程と思考負荷の可視化
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17H04793
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
岡本 尚子 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (30706586)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 数学教育 / 脳活動 / 視線 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,教育学の分野では,効果的な指導を行うために,科学的根拠に基づいた教育の重要性が世界的に高まっている。こうした教育の実現には,学習時と指導時における思考過程や思考負荷の関連が可視化される客観的なデータが必要となり,視線計測と脳活動計測の生理学的手法は有用性が高いものであると考えられる。本研究の目的は,学習者と指導者双方の視線と脳活動の同時計測によって,学習と指導の関係を生理学的観点から明らかにすることで,効果的な算数・数学の指導を検討することである。 本年度は,「指導者」「学習者」の視線・脳活動の特徴の解明を目的として実験研究を行った。実験は,タングラム(7つのピースで指定された図形を作るパズル)を課題に設定し,1人が「指導者」役,もう1人が「学習者」役として,大学生2人がペアで実施することとした。学習者はタングラムに取り組む役割を,指導者はその様子を隣で観察しながら適宜助言(ヒント)を与える役割とした。両者の視線計測,脳活動(Near-infrared spectroscopy(NIRS))計測を実施した。実験にあたっては,参加方法や個人情報の取り扱いについて参加者に同意を得た。 4組を対象とした実験の結果,指導者はヒントを提示しようと考え始めたタイミングで,学習者から目を離す回数が増え,脳活動が賦活する傾向にあった。ヒント提示は,指導者にとって思考負荷の高い活動であると考えられる。一方,学習者は,ヒントが有用であったと感じた場合,ヒントを見た後に脳活動が賦活する傾向にあった。ヒントによって,行き詰った問題解決(思考)が促進されたためと予想される。ただし,ヒントが有用であったと感じられなかった場合には,ヒント後の脳活動の賦活も見られない傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は学外研究により海外に滞在していたため,十分な実験参加者数を確保できたとは言い切れないが,指導者と学習者を想定した視線計測,脳活動計測の実験を実施することができた。また,指導者と学習者についての特徴を,同時に検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,まず,参加者を増やして今年度の実験を実施し,分析を継続する。また,今年度は「図形課題」を実施したため,来年度は指導者と学習者を想定した「計算課題」を設定して実験を実施し,計算課題の結果と図形課題の結果を比較・検討する。さらに,来年度は最終年度となるため,これまでの研究の総括を行う。
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Research Products
(12 results)