2017 Fiscal Year Annual Research Report
レアメタルフリーナノサイズ分子磁石合成の新展開-量子相制御と量子巨大応答-
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17H04800
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
姜 舜徹 広島大学, 工学研究科, 准教授 (90597006)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノ材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
優れた機能を有する光、電子材料の開発は現在の科学技術の重要な研究課題である。持続可能な社会の構築のためには、こうした機能材料・先端デバイスを希少元素を用いずに実現することが求められている。 本研究では、申請者が開発したレアメタルフリーのナノサイズ分子磁石(Fe42錯体)を基盤として、金属原子が持つスピン、電荷、軌道の自由度を活用し、その電子状態を制御することで、新奇機能を有するナノサイズ分子磁石の開発を目的としている。具体的には、Fe以外の金属を42核ナノサイズ分子磁石に導入し、異種金属イオンから構成されるヘテロメタル混合原子価状態を生み出すことでその物性制御を試みている。 本研究課題初年度は,Fe42核ナノサイズ分子磁石のFeイオンをMnイオン, Niイオンに置換することでFe24Mn18錯体, Fe24Ni18錯体の新規ナノサイズ分子磁石の合成に成功した。また,得られた結晶について, 単結晶X線構造解析及びXPS測定, メスバウアー分光分析測定などでその電子状態の解析を行った。SQUIDによるFe24Mn18錯体の磁化率測定では, 室温付近の磁化率が89.2 cm3mol-1Kであったものが, 低温領域では急激に減少し, シアノ基を介したFeIII-LSとMnII/III-HS間での反強磁性的な相互作用を示すことが示唆された。一方でFe24Ni18錯体は,Fe42錯体と同様, 強磁性相互作用を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とするヘテロメタルナノサイズ分子磁石はX(CF3SO3)2[X = Mn, Ni]とL-ascorbic acidを溶かした水溶液と, 錯体配位子Li[Fe(Tp)(CN)3] (Tp = hydrotris(pyrazolyl)borate), 有機配位子1,3-di(4-pyridyl)propane (dpp)を溶かした水溶液を試験管中で反応させることで立方体結晶として得ることに成功した。その混合原子価状態をXPS, SQUID, メスバウアー測定などから評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
新規合成した錯体分子の磁気特性をSQUID装置による,より詳細な磁化率の温度依存性測定を行う。また錯体配位子Li[Fe(Tp)(CN)3]のFeイオンを他種金属イオン(A)に置換することで,今回得られたFe24X18錯体系ではなくA24X18錯体系への合成に展開した新規ナノサイズ分子磁石の合成を目指す。
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