2017 Fiscal Year Annual Research Report
ナノワイヤ/ポアデバイスによる物質の選択的分離・段階的脱離・1分子検出法の創成
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17H04803
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安井 隆雄 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00630584)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノワイヤ / マイクロヒーター / マイクロ/ナノポア |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の身の回りには様々な大きさの極微量有害・危険物質が多数存在しており、それら物質を同定する技術が強く求められている。しかし、既存技術ではその要求に答えられていないため、我々は以前として、それら物質に対する漠然とした不安を抱いている。本研究では、ナノワイヤ/ポアデバイスによる物質の選択的分離・段階的脱離・1分子検出法を開発し、多種多様な夾雑物が混在する「真の」リアルサンプルから極微量有害・危険物質の複数種同時検知を実現する。初年度は物質の選択的分離に向け、分子認識能を有する表面修飾ナノワイヤの開発を達成した。本研究で用いたナノワイヤは、液中での安定性や自己加熱能の付与を鑑み、酸化物ナノワイヤを使用した。表面修飾には、両末端に機能を有するペプチドを用いた。このペプチドは片末端が酸化物を認識するように、もう片末端が細菌類を認識するような配列を用いた。この時、酸化亜鉛への結合能が強い場合は、次年度以降の熱による脱離が困難であるという問題点が考えられたため、本研究では、酸化亜鉛ナノワイヤへの結合性を段階的に弱くし、熱での段階的脱離が可能となるペプチドの開発を行った。既知のペプチドの配列を変化させ、体系的にペプチドの結合力を弱し、酸化亜鉛ナノワイヤへの結合力が段階的(4段階程度)に異なるペプチド配列を開発した。また、複数種の有害・危険物質を分離するために、PM2.5やウイルスを認識するペプチド配列も着手した。酸化亜鉛ナノワイヤへの結合力が段階的に異なるペプチドとPM2.5や細菌、ウイルスを認識するペプチドを組み合わせ、酸化亜鉛(結合力1)―PM2.5、酸化亜鉛(結合力2)―細菌、酸化亜鉛(結合力3)―ウイルスのペプチド開発にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、両末端に機能を有するペプチド(酸化亜鉛-ターゲット物質)を開発したことに加え、熱による脱離実験にも成功した。また、酸化亜鉛ナノワイヤへの結合性を段階的に弱くし、熱での段階的脱離が可能となるペプチドの開発にも成功した。さらに、この段階的脱離が可能なペプチドと酸化亜鉛ナノワイヤへの結合様式を赤外分光により解析を行い、ペプチド配列が結合様式に影響を与えることを科学的に明らかにしている。これら理由に加え、次年度以降に行うマイクロ/ナノポアの開発も着実に進んでいるため、当初の計画以上に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は物質の段階的脱離に向け、分子認識能を有する表面修飾ナノワイヤに自己加熱能を付与することによって達成する。酸化物ナノワイヤの自己加熱には以下の2つの利点がある;1.熱伝導率が金属より低いため、条件によっては熱をより高く上昇させることができる。2.ナノワイヤ内のキャリア濃度の制御が可能なため(金属は電気伝導度をコントロールできない)、自己加熱をチューニングできる。自己加熱能を有するナノワイヤの開発は、マイクロヒーター上にナノワイヤの作製、あるいは電極間に酸化物薄膜とナノワイヤの作製により行う。申請者は、酸化亜鉛ナノワイヤに電流を印加し、ナノワイヤ周りの温度を制御することに成功する予備研究成果を得ている。しかし、本予備成果は空気中で行った実験であり、水中での実施例はまだ無い。水中ではジュール加熱のバランス空気中より困難であると予想される。そこで、次年度以降では、水中でのナノワイヤの温度制御を行うと共に、参照電極をマイクロヒーター近傍に設けることで、ナノワイヤ近郊の温度を水の抵抗値より計測を行い、ナノワイヤ近郊の温度と印加電流との相関を得る。また、前年度に開発する酸化亜鉛ナノワイヤへの結合力が段階的(4段階程度)に異なるペプチド配列に対して、ペプチドの脱離温度(印加電流)の検討を行い、各電流値における段階的脱離を達成する。
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Research Products
(10 results)