2018 Fiscal Year Annual Research Report
ナノワイヤ/ポアデバイスによる物質の選択的分離・段階的脱離・1分子検出法の創成
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17H04803
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安井 隆雄 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00630584)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノワイヤ / ナノ材料 / ナノ空間 / ナノ界面 / 1分子科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は物質の段階的脱離に向け、分子認識能を有する表面修飾ナノワイヤに自己加熱能の付与を達成した。酸化物ナノワイヤの自己加熱には以下の2つの利点があった:1.熱伝導率が金属より低いため、条件によっては熱をより高く上昇させることが可能である。2.ナノワイヤ内のキャリア濃度の制御が可能なため(金属は電気伝導度をコントロールできない)、自己加熱のチューニングが可能である。4パターンの自己加熱能を有するナノワイヤの開発を行った。それらは、マイクロヒーター上のナノワイヤ、電極間の酸化物薄膜より成長させたナノワイヤ、電極間ナノワイヤ、ペルチェ素子上のナノワイヤである。最初に、空気中での酸化物ナノワイヤへの電流印加とナノワイヤ周辺の温度変化を赤外線カメラによって計測した。印加電圧に応じてナノワイヤとその周辺温度の制御が可能であり、電圧印加より数十秒で目的とする温度に到達することを確認した。次に水中での温度計測として、DNAを用いた温度計測法を着想した。DNAは溶媒の温度によって2本鎖が1本鎖に変性することが知られており、その1本鎖になる温度も配列によって制御可能である。2本鎖DNAの吸着とそのDNAの1本鎖化により、水中での温度計測を実証した。その後、前年度に開発した酸化物ナノワイヤへの結合力が段階的(4段階程度)に異なるペプチド配列に対して、ペプチドの脱離温度(印加電圧)の検討を行った。さらに、酵母細胞の破砕にもナノワイヤの自己加熱能の展開を行った。柔軟な構造を有するナノワイヤに自己加熱能を付与し、細菌・酵母をナノワイヤに絡みつかせることで、ナノワイヤより細菌・酵母へ直接熱を与え、ナノワイヤを経由した効率的な熱破砕を達成した。この技術は、従来必要であった特殊な破砕溶液を必要とせず、水中に分散させた細菌・酵母をナノワイヤに導入するだけで、細菌・酵母の効率的な破砕が可能でった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は酸化物ナノワイヤに自己加熱能の付与による物質の段階的脱離のみならず、当該ナノワイヤによる細菌・酵母の破砕への展開も達成でき、当初の計画以上に進展していると考える。酸化物ナノワイヤへの自己加熱能の付与に関しては、様々な用途が考えられ「1.マイクロヒーター上のナノワイヤ」、「2.電極間の酸化物薄膜より成長させたナノワイヤ」、「3.電極間ナノワイヤ」「4.ペルチェ素子上のナノワイヤ」の4パターンの開発を行った。それぞれのパターンが特徴的な性質を持っている。「1.マイクロヒーター上のナノワイヤ」は、ナノワイヤ近傍の温度を上昇させることが可能であり、ナノワイヤからの物質脱離のみならず、脱離後の物質の熱拡散運動も上昇させることができる。「2.電極間の酸化物薄膜より成長させたナノワイヤ」では、ナノワイヤのみの温度上昇が電圧のパルス印加により可能であり、熱により変性するタンパク質のような物質には有用である。「3.電極間ナノワイヤ」は、そのナノワイヤ自体をセンサ素子としても展開が可能である。「4.ペルチェ素子上のナノワイヤ」では、デバイス全体を加熱することができ、ナノワイヤの下流側にPCRのような熱による増幅機構を組み込むことが可能である。本年度はその中でも、「1.マイクロヒーター上のナノワイヤ」を用いて、空気中・水中のナノワイヤとその近傍温度制御を達成し、「4.ペルチェ素子上のナノワイヤ」を用いて、細菌・酵母の破砕技術への展開を達成した。「2.電極間の酸化物薄膜より成長させたナノワイヤ」と「3.電極間ナノワイヤ」の技術展開も着実に進めている。これら成果に基づき、本年度は当初の計画以上に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は物質の1分子検出にむけ、自己加熱・表面修飾ナノワイヤにポアデバイス(0.2-10 umのサンプルを電流検出可能)の融合を行う。ナノワイヤ/ポアデバイスの融合は、ナノワイヤを作製したガラス等の基板へ、シリコーンゴム(PDMS等)製ポアデバイスの貼付けにより行う。まず、PDMS製ポアデバイスをガラス基板に貼付け、0.2-10 umのサンプルの電流検出を達成する。続いて、PDMSポアデバイスのポアの直前部に自己加熱・表面修飾ナノワイヤが入るような空間を設けることで、ナノワイヤ/ポアデバイスの融合を達成する。ナノワイヤ加熱の水の温度上昇による抵抗値変化が、ポアデバイスの電流検出に影響を及ぼすと予想されるため、脱離の際に必要な電圧をパルス印加して、脱離可能かつ電流検出に最も影響を及ぼさない条件や、キレート剤などによる脱離条件の検討を行う。さらに、初年度に開発したペプチドを用い、ナノワイヤ表面修飾部で選択的分離を、ナノワイヤ自己加熱部で段階的脱離を、ポア電流検出部でそれぞれの1分子検出を達成する。
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Research Products
(22 results)