2018 Fiscal Year Annual Research Report
フォトクロミック分子複合構造における光スピン機能物性と革新的磁化制御手法の研究
Project/Area Number |
17H04808
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
中山 裕康 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, ICYS研究員 (30727011)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スピン流-電流変換 / ラシュバ・エデルシュタイン磁気抵抗効果 / スピン軌道相互作用 / スピンポンピング / 逆ラシュバ・エデルシュタイン効果 / フォトクロミック分子 / スピントルク強磁性共鳴 / スピンホール磁気抵抗効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
スピントロニクスから派生したスピンオービトロニクスと呼ばれる研究領域において,電流-スピン流変換現象によって駆動されるスピン軌道トルクは,次世代の磁化制御技術の候補として注目されている.本研究課題は,フォトクロミック分子を中心とした有機分子膜と磁性体積層膜の複合構造を利用することで,界面・表面のスピン軌道相互作用,スピン流-電流変換およびスピン軌道トルクの光による制御を目指すものである. 研究開始後2年目に当たる本年度は,これまで有機分子膜修飾によって得られているスピン軌道トルクに対する変調効果の増大を目指し,前年度までに蓄積した知見を基にさまざまな有機分子/常磁性体/強磁性体複合構造を作成し,電流-スピン流変換を系統的に調べた.その中で,金属薄膜に対して有機分子膜を修飾することで,「表面」のスピン軌道相互作用が変調されることにより,スピン流-電流変換効率の大きさが変化することが明らかとなった.金属系の表面のスピン軌道相互作用を介したスピン流-電流変換とその変調は,これまでのバルク及び界面を中心としたスピン流-電流変換の研究では積極的に活用しようという意識が無かった.本研究成果は表面のスピン軌道相互作用を介したスピン流-電流変換の重要性を指摘するとともに,有機物による表面のスピン軌道相互作用をコントロールする新しいルートを切り拓くものであり,有機物スピンオービトロニクスの研究を加速するものと期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始後2年目の研究では,これまでに有機分子膜修飾によって得られているスピン軌道トルクに対する変調効果の増大を目指し,さまざまな有機分子/常磁性体/強磁性体複合構造を作成し,電流-スピン流変換を系統的に調べた.その中で,金属表面のスピン軌道相互作用の大きさが有機分子修飾によって変化し得ることが明らかとなった.このような新しい知見を見出した意義は大きく,次年度の展開に繋がる研究成果と考えられ,本研究はおおむね順調に進展している.また,昨年6月に研究代表者の所属が変わったため,実験装置の移設や再立ち上げを行った.現在,移設前とほぼ同等の実験が遂行可能な状況となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
常磁性体薄膜に対して有機分子膜を修飾することで,表面のスピン軌道相互作用の大きさが変調されることに起因して,スピン流-電流変換の大きさが変化し得ることが本年度の研究により実験的に明らかとなった.このような表面あるいは界面のスピン軌道相互作用を利用することで,今後は全真空下での分子複合膜試料作成をさらに行い,より幅広い材料系での界面及び表面のスピン軌道相互作用の制御を目指す.作成した試料については,これまでと同様,磁気抵抗測定やスピンポンピング,スピントルク強磁性共鳴法を併用することで,スピン蓄積-電流変換について系統的に調べる.
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Research Products
(4 results)