2017 Fiscal Year Annual Research Report
ゲート誘起相転移を用いた低電圧トランジスタのデバイス物理構築
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17H04812
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢嶋 赳彬 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10644346)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 金属絶縁体転移 / モットトランジスタ / 酸化バナジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
集積回路の低消費電力化のため、0.5V未満の低電圧で動作するトランジスタの開発が急務となっている。そのようなトランジスタの候補として、研究代表者はこれまでに相転移トランジスタの研究を行い、固体素子を室温動作させることに世界で初めて成功した。しかし現状では、その動作メカニズムに不明な点が多く、期待されていた低電圧動作も実現していない。本研究では、相転移材料VO2をチャネルとするトランジスタを用いることで、相転移を取り込んだトランジスタの新しいデバイス物理を構築することを目的としている。初年度はトランジスタの基本的な特性を様々なパラメータを振りながら評価した。その結果、トランジスタのゲートに電圧を印加してから、VO2チャネルの電気伝導度が変化するまでには100ms程度の大きな時間遅れが存在することが分かった。これはVO2トランジスタの同さ原理を理解するうえで非常に重要な特徴である。この時間遅れの間に置きていることを調べるため、光学顕微鏡に高速画像取り込みが可能なモノクロカメラを接続し、VO2チャネルを上面から見た時の変化を観察した。その結果、ゲート電圧印加直後に変化は見られず、そこから徐々に金属領域が広がっていく様子が観察された。このように、ゲート電圧を印加してからVO2チャネルの伝導度が変化する過程では、薄膜面内に金属領域が広がる過程が介在しており、このようにゲート電圧がVO2金属相のドメイン構造を介してチャネルの電気伝導をスイッチしている点は、まさに本トランジスタの特徴的な点だと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VO2トランジスタのデバイス物理を構築するためのカギとなる特異な現象(ゲート電圧応答特性)を見出し、それを集中的に調べることで本デバイスの特徴を明らかにすることができた。ここで得られたデバイス物理を基に、デバイス構造の改善を行うことで、さらなる特製の向上が望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究の中で、本トランジスタの特徴的な振る舞いとして、ゲート電圧を印加してからの過渡特性が通常の電界効果トランジスタとは大きく異なることが分かった。この特異な過渡特性は、本トランジスタのデバイス物理を理解するうえでキーになると考えられる。しかし現状では、VO2チャネルが100um四方の大きな面積を持つため、局所的な過渡特性がチャネル全面で平均化された結果としてのチャネル電流値しか観察することができない。本トランジスタの本質的な特徴をつかむためには、局所的な過渡特性を実験的に明らかにすることが不可欠である。そこで本年度は主にチャネルの微細化に取り組み、100nm程度の長さスケールのチャネルを作製することで、ゲート電圧に対する局所的なVO2の過渡特性を観察することを目指す。大学の共同設備であるアドバンテストF7000電子線描画器を用いて、そのような微細な素子構造の作製を行う。
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