2017 Fiscal Year Annual Research Report
スピン軌道相互作用を利用した3d遷移金属酸化物の磁性制御
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17H04813
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅 大介 京都大学, 化学研究所, その他 (40378881)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 酸化物ヘテロ構造 / 磁気輸送特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、遷移金属酸化物をヘテロ構造化することでバルクにはない特異な結晶構造を安定化し、スピン軌道相互作用などの磁気特性に関連した相互作用を変調することで、機能特性を制御・開発することを目標としている。遍歴強磁性体であるルテニウム酸化物をヘテロ構造化することで、薄膜/基板界面領域において結合角度が空間的に変調した特異な構造が安定化されることが明らかになっている。つまり膜厚を界面領域に厚さと同等にすることで新しい機能特性の発現が期待される。実際、膜厚が数nm程度の薄膜の磁気輸送特性を評価したところ、正常ホール効果や異常ホール効果では説明できないホール抵抗率の興味深い振舞いを見出した。薄膜の作製条件を変化させた実験から、ホール抵抗の異常な振る舞いは、基板からのストレインの種類や大きさには依存しないことが分かった。また薄膜中のカチオン不定性にも強く依存することも明らかになりつつある。また極薄薄膜においては、電界効果が顕在化する可能性がある。実際、原子レベル構造制御したルテニウム酸化物薄膜をチャネルとする電界効果トランジスタを作製し、電界印加による異常ホール効果といった磁気輸送特性の変調を試みた。結果からは異常ホール効果の大きさだけでなくその符号までも電界変調できることが明らかになった。これらの振舞いは通常の強磁性金属では観測されない振舞いであり、ルテニウム酸化物の有する特異なバンド構造に由来するベリー曲率が起源となっていることを明らかにした。これらの結果はヘテロ構造化による特異構造の安定化が機能開発に有用であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘテロ構造化によってバルク試料からは予想できないような物性を見出すことができた。ルテニウム酸化物に関しては「ホール抵抗の異常な振る舞い」や「異常ホール効果の電界変調」を見出すことができた。見出した異常な振る舞いは、トポロジーによって特徴づけることのできる特異な磁気構造の形成を示すトポロジカルホール効果とも見ることができ、現在詳細な磁気輸送特性測定を含め、機構解明に取り組んでいる。またこれらの研究過程で、今後の実験にも必要不可欠な試料作製プロセスや磁気輸送特性測定環境の構築にも取り組み、研究環境が整備されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
ルテニウム酸化物だけでなく、他の遷移金属酸化物に対してもヘテロ構造化することで機能開発を行う。また3d遷移金属酸化物に対してはスピン軌道相互作用が弱いと考えられるので、よりスピン軌道作用の大きな4dもしくは5d酸化物とのヘテロ構造を作製し、3d遷移金属酸化物中のスピン軌道相互作用を変調する。この取り組みを通して遷移金属酸化物の磁気特性の制御やヘテロ構造化による新奇機能開発を継続する。
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Research Products
(13 results)