2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of flexible materials equipped with carrier modulation capability by stress
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17H04814
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中嶋 宇史 東京理科大学, 理学部, 講師 (60516483)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | キャリア注入 / 自発分極 / 強誘電性ポリマー / 熱電 / 圧電 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学ドープや電界効果に頼らず、外力として加えられた応力のみによって、半導体内にキャリア注入を実現するための新材料と新技術の創出を目的として研究を進めている。H29年度は、フレキシビリティの優れた強誘電性ポリマーを用いて、キャリア誘起層には、1次元導体であるカーボンナノチューブ、2次元導体であるグラフェン、3次元導体である導電性高分子PEDOT/PSSを選択し、それぞれへのキャリア注入を検討した。構造としては、強誘電性高分子薄膜層をゲート絶縁層とし、薄膜化されたキャリア誘起層との積層構造からなるトランジスタ構造を作製した。外部電界を印加し、強誘電性ポリマーの分極反転を誘起し、電場オフ時における電気伝導度ならびにゼーベック係数を評価した。その結果、PEDOT/PSSならびにグラフェンにおいて自発分極の方向によって数十%の熱電変調が可能であることが明らかになった。また、PEDT/PSSの膜厚ならびにグラフェンの層数を変えて同様の実験を行ったところ、薄膜化に伴う特性変化がより顕著に見られており、自発分極によって誘起されたキャリアが界面近傍において注入されるということも明らかになっている。さらに、カーボンナノチューブについては、強誘電性ポリマーとのコンポジット化も行った。カーボンナノチューブの配合率、分散性について様々な条件下で試料を作製し、その輸送特性ならびに熱電特性の変化について調査した。特筆すべき点として、複合膜を延伸し、配向性を変化させた際に、ゼーベック係数が2倍程度増加するということを新たに見出すとともに、自発分極によるキャリア注入によって熱電特性が変調可能であることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度においては、高配向強誘電性ポリマーの分極界面を活用した高密度なキャリア注入について、重点的に研究を行った。強誘電性ポリマー中に分散されたカーボンナノチューブ複合膜を一軸延伸延伸し、その配向性を制御した上で、自発分極によるキャリア注入を行った。自発分極によるキャリア注入効果が主たる目的ではあるが、延伸過程によって熱電特性が大きく向上するといった予想外の効果も見いだされたことから、その機構解明に向けた研究について今後検討していく必要があると考えている。また、PEDOT/PSSやグラフェン膜においても電界効果トランジスタ構造によって、自発分極によるキャリア注入を評価することができた。また、初年度ということもあり、試料作製ならびに特性評価に関する装置導入についても順調に進めることができた。分極処理を電極なしに行うことのできるコロナ分極装置を、大面積かつ温度可変環境下で使用できるようにするとともに、分極反転中にホール測定、熱電評価が可能となるシステムを開発することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、強誘電性ポリマーの一軸配向複合膜を作製し、延伸倍率を変化させて際に熱電特性が変調されることを見出している。この機構の解明が重要な課題であると認識しており、カーボンナノチューブの伸長効果、配向効果、強誘電性ポリマーの自発分極によるキャリア注入効果についてより定量的な理解が求められる。そこで、今後においては、その機構解明を目的とした界面状態の微視的観察やより詳細な電気的特性評価を進めていきたいと考えている。また、カーボンナノチューブ単体もしくは複数本の熱電特性を評価することで、ボトムアップ的な特性理解についても挑戦したいと考えている。また、グラフェンと強誘電性ポリマーの層状構造を形成し、分極反転によってグラフェン中にキャリア注入が有意に実現され、熱電特性が変調可能であることも明らかにしてきた。H30年度においてはグラフェン層の膜厚依存性に注目し、そのキャリア注入効果についてより定量化を進めていきたいと考えている。
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