2018 Fiscal Year Annual Research Report
気液境界高振動温度窒素プラズマによる新概念窒素固定法の創成
Project/Area Number |
17H04817
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高島 圭介 東北大学, 工学研究科, 助教 (70733161)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 気液界面プラズマ / 振動励起 / 窒素固定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,食料生産に不可欠な化合物窒素を効率的に合成する放電プラズマ窒素固定法の実現に向け,気液境界高振動温度窒素プラズマ生成を行う.二年目は,換算電界の更なる増加,プラズマ中でラマン散乱光を観測できるプラズマ装置および観測系開発,さらに気液界面プラズマによる窒素酸化物生成過程の観測を行い,以下の知見を得た. 1.換算電界増加やパルス繰返し周波数増加に伴う放電電力の増加が,プラズマの減衰特性に影響を及ぼし,減衰時間が延びることが観測された.この減衰時間の延長が更なる放電電力増加を招き,自己維持放電への遷移を引き起すことが実験的に明らかとなった.これは,換算電界の増加が振動励起効率の増加に必要である一方で,同時に放電電力増加を伴うため,非自己維持放電では印加できる換算電界上限がある事を意味する.すなわち,放電電力を増加させずに高い換算電界の印加を実現できる放電パラメータの必要性を明らかにした. 2.パルス印加時間の増加により,低繰返し周波数条件でも非自己維持直流放電が実現できるかを実験的に検証し,上述の放電電力が過大となるため実現が難しかった2Td以上の換算電界を非自己維持直流放電で実現した.これにより振動励起効率の改善が期待される. 3.ラマン散乱・発光観測から窒素の振動・回転温度を計測できるよう,放電装置の開発およびラマン散乱・発光分光系を構築しおおむね完成に至った.これまでに,大気圧中空気のラマン散乱計測,大気圧窒素プラズマの発光分光計測を行い,窒素のラマン散乱信号の観測と,窒素の回転温度計測を実施した. 4.液体電極を用いて生成した大気圧プラズマが生成する気相窒素酸化物の密度を,FTIRを用いて観測した.通常の大気圧誘電体バリア放電より多くの窒素酸化物密度が得られる条件がある事が実験的に明らかとなり,窒素固定に向けた気液界面プラズマの有効性が期待される結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
二年目に予定していた,窒素の振動温度・回転温度の分光計測系の準備を,上述の通りおおむね完了し,それに加え当初の予定外である以下の知見も得るに至ったため. 1.初年度の知見では,非自己維持直流放電で更なる高換算電界を実現するためには,プラズマを生成する電離波がより高速で伝播する必要があり,より高電圧且つ高繰返しのパルス電圧印加が必要との結論に至っていた.しかしながら,いずれの手法も,換算電界印加の増加または繰返し周波数増加に伴う放電電力の増加を招くのため,更なる高換算電界を得ることが難しかった.一方で,電離波の進展速度の低下を,パルス印加時間の増加によって補うという初年度の着想から,当初の予定になかった,パルス印加時間の延長による換算電界向上に向けた実験を行った.その結果,これまでの非自己維持直流放電では注目されてこなかったパルス印加時間の制御が,放電電力増加を抑える低繰返し条件での非自己維持直流放電を実現し,3Td程度の換算電界の直流放電を実現するに至った.すなわち,パルス幅の増加は,換算電界増加による振動励起効率の向上に重要なパラメータであることを見出した. 2.さらに,気液界面プラズマにより生成された窒素酸化物の計測を行い,液体の流量変化に伴い,窒素酸化物密度と組成が変化することが実験的に見いだされた.これは気液界面プラズマによる気液界面付近の温度に関連して,窒素酸化物生成が変化したことを示していると考えられる.すなわち,振動・回転・並進温度の制御が気液界面プラズマの窒素固定に重要である可能性が期待できる成果である.これに加え,窒素酸化物を放出する気液界面プラズマが,寿命の短い活性種を生成し,それと関連して植物病原菌の活動を抑止することも実験的に明らかとなり,農地でのプラズマ窒素固定に何らかの付加価値をもたらす可能性が示された.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果から,振動励起に適切な換算電界と放電電力の制御を実現するパラメータが明らかとなってきた.最終年度は,窒素の振動温度・回転温度計測を換算電界制御と同時に行うことにより,振動励起エネルギー効率を明らかにし,振動温度を最大化する条件を実験的に明らかにすることを目指す. さらに,ナノ秒パルス放電維持-非自己維持直流放電プラズマ中での酸素混合を実現し,窒素酸化物生成の実証実験を行う. 上述の通りパルス印加時間を増加したことで,電離波進展速度低下の影響が抑えられるため,現状の0.2気圧より高圧下で換算電界制御が実現できる可能性があり,より高圧条件でナノ秒パルス維持‐非自己維持放電の実現を目指す. また,上述の過大な放電電力がプラズマの減衰特性に影響与え,その結果自己維持放電への遷移が引き起こされているとの知見は,窒素1分子あたりに一定以上のエネルギーが加えられると,プラズマの減衰に影響を及ぼすと解釈できる.そこで,窒素流量を大幅に増加させることで,窒素1分子あたりに加わるエネルギーを低減し,自己維持放電への遷移が抑制されるかどうかを実験的に検証する.
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[Book] Plasma Medical Science2018
Author(s)
T. Kaneko, S. Sasaki, K. Takashima, M. Kanzaki, M. Tachikawa, H. Kanetaka, T. Sato, and M.G. Kong
Total Pages
458
Publisher
Elsevier Science
ISBN
9780128150041
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