2018 Fiscal Year Annual Research Report
X線レーザーとナノ構造形成技術を駆使した高速電子密度マッピング
Project/Area Number |
17H04819
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 明大 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (20781850)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | X線イメージング / X線自由電子レーザー / コヒーレントX線回折 / 位相回復計算 / フォトリソグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
パルス状コヒーレントX線溶液散乱(Pulsed Coherent X-ray Solution Scattering, PCXSS)法と名付けられた新しいX線イメージング法は、短波長性・超短パルス性・高い空間コヒーレンスという特長をもつX線自由電子レーザー(X-ray Free-Electron Laser, XFEL)と、独自開発の溶液試料環境セル(Micro-Liquid Enclosure Array, MLEA)によって、溶液試料のナノ空間分解能観察を可能にする。本研究課題では、単一試料にX線が照射される確率(試料ヒット率)をフォトリソグラフィに代表される微細加工技術によって向上させることで、高い測定スループットの実現を目指している。平成30年度は、1枚のMLEAに集積されたマイクロ溶液槽どうしを隔てている仕切りの高さと試料ヒット率の関係に着目した。変えることが難しい試料の大きさや溶液中粒子密度にあわせて、仕切り高さを制御し、溶液槽の体積を変化させることで、試料ヒット率の向上が期待できる。リソグラフィ条件を変えながら仕切りの試作を行い、電子顕微鏡や非接触三次元表面形状測定装置で構造を評価した結果、エポキシ樹脂ベースのフォトレジストであるSU-8の粘度や、それを基板にスピンコートする際の回転数を最適化することで、500 nmから2 umまで仕切り高さを制御できることが分かった。また、平成29年度に研究を進めた、ナノ構造体が表面に形成されたMLEAに関する成果を、査読付きの国際学術誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リソグラフィ条件を最適化することによって、MLEAの仕切り高さをサブマイクロメートルスケールで制御することに成功したため。加えて、その仕切り高さを制御したMLEAを用いたPCXSS測定により、生細胞や機能性ナノ粒子からのコヒーレントX線回折パターンを取得できたため。さらには、ナノ構造体が表面に形成されたMLEAに関する成果を査読付きの国際学術誌に投稿できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
制御可能となった溶液槽の体積と試料ヒット率の関係を、試料に生細胞を用いて、実際のPCXSS測定により評価する。もう一つは、すでに取得済みの生体・材料試料からのコヒーレントX線回折パターンのデータ解析を進める。XFELで取得できるテラバイトスケールの回折パターンデータを効率的に解析するため、XFEL施設SACLAに整備されているハイパフォーマンスコンピュータを利用するとともに、プログラムの改良も進める。
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