2017 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of supermassive black holes and galaxies in the early universe
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17H04830
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
松岡 良樹 愛媛大学, 宇宙進化研究センター, 准教授 (60547545)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙誕生直後の10億年は、その後の全宇宙進化を規定することになる極めて重要な黎明期である。星と銀河、そして10億太陽質量にも達するような巨大ブラックホールの初代の種族が、この時期に形成されたと考えられている。本研究は、最先端の観測機器を用いたかつてない超高感度 ・広視野の探査観測を実現し、宇宙黎明期における巨大ブラックホールと母銀河の普遍的な姿を、世界に先駆けて明らかにしようとするもので ある。 研究初年度となる当該年度には、日本のすばる望遠鏡に搭載された広視野カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC)による広域探査データを用いて、宇宙年齢8億年前後に対応する赤方偏移6の宇宙に存在する巨大ブラックホールの探索法の確立を行なった。遠方の巨大ブラ ックホールを検出する唯一の方法は、そのクエーサー光を捉えることである。クエーサーは銀河系の星々と同じく、固有の広がりが観測解像度よりも小さい点状天体として観測される。しかし星々とは大きく異なるスペクトルを持ち、可視光・近赤外線のある波長を境に、長波長側で突然明るくなるという特徴を示す。HSCの広域探査データを精査し、このような明るさの特徴を目印として、遠方クエーサーの候補を抽出した。主にすばる望遠鏡と大カナリア望遠鏡を用いて追分光観測を実施し、スペクトルを計測した結果、候補天体の半数以上が真の遠方クエーサーであることが確認された。これをもって、本研究の遂行に十分な効率を持つ探索法が確立された。 発見された天体については、地球からの距離や光度などの物理量を測定し、速報として学術誌上にて発見報告を行うとともに、探索法の詳細などと合わせて国内外の研究会において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の成功の鍵は、HSCの画像データ上に写る膨大な天体の中から、いかに効率的に遠方クエーサー候補を抜き出すかにある。本年度のうちに十分に効率のよい探査法が確立できたという点で、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
確立された遠方クエーサーの探索法をフルに活用し、利用可能な全HSCデータから本格的に遠方クエーサー探査の抽出を行う。引き続きすばる望遠鏡、大カナリア望遠鏡など地上の口径8-10m級の大望遠鏡に観測時間を獲得し、候補天体の追分光観測、スペクトルの計測を実施する。得られたスペクトルから遠方クエーサーを同定し、地球からの距離、光度などの個々の天体の物理量を測定するとともに、宇宙空間の単位体積あたりの数密度など統計量についても導出を試みる。これらの統計量を理論モデルと比較し、クエーサーが宇宙を再電離し得たかについて新たな観測的知見を得ることを目指す。
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Research Products
(8 results)