2019 Fiscal Year Annual Research Report
全天ガンマ線データの統計的解析による暗黒物質粒子の探査
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17H04836
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 真一郎 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 客員科学研究員 (80791970)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 暗黒物質対消滅 / 高エネルギー天体 / 全天ガンマ線解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画においても重要な要素となる、暗黒物質サブハローのモデルとその対消滅への見積もりに関するレビュー記事を、Galaxies誌、7巻、68頁 (2019)として出版した。関連して、数値シミュレーションの結果を詳細に解析し、最小スケールのサブハローの性質を研究、結果をMonthly Notices of the Royal Astronomical Society誌、492巻、3662頁 (2020)として出版した。 実際のフェルミ衛星によって得られたデータを、Dark Energy Surveyによる最新の重力レンズデータとクロス相関を用いることで解析をおこなった。この結果、世界で初めてガンマ線と重力レンズデータのクロス相関を発見した。これはガンマ線背景放射の起源を探る上で、重要なステップである。さらに本研究計画で構築したサブハローモデルを適用することにより、暗黒物質対消滅のモデルに対して制限を与えた。この結果はPhysical Review Letteters誌、124巻、101102 (2020)として出版された。 その他、winoと呼ばれる有力な暗黒物質候補において、最小サイズのサブハローへの影響を議論した論文をPhysical Review D誌、100巻、123519 (2019)、将来の大規模銀河サーベイ計画で発見が期待される矮小銀河や、低輝度銀河を用いた暗黒物質対消滅への示唆をそれぞれ、Journal of Cosmology and Astroparticle Physics誌、1910巻、040と同誌2001巻、059として、さらには重い暗黒物質の崩壊モデルを宇宙線、ガンマ線、ニュートリノのデータを用いて包括的に議論した結果を、Journal of Cosmology and Astroparticle Physics誌、2001巻、003として出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
暗黒物質対消滅を議論する上でサブハローの存在を無視することはできない。2018年度にサブハローの準解析的モデルを構築したが、2019年度においてそのモデルを様々な物理的枠組みに適用することに成功した。適用範囲も広く、銀河ハローにおける対消滅レートを最小スケールサブハローまで考慮に入れて計算したものから、比較的大きい矮小銀河サイズのサブハローの存在可能性を議論するものまで多岐にわたる。 本計画の主なテーマであった、ガンマ線データと大規模構造のクロス相関に関しても、Dark Energy Surveyの最新データを用いることにより、結果を出版することができた。ここでも前述のサブハローモデルを用いた暗黒物質対消滅の予言を用いることにより正確な制限を導き出すことに成功している。 その他、すでに知られている矮小銀河に、準解析的サブハローモデルを適用することで、観測データの解釈を補正し、10年以上にわたって広く用いられてきた手法を大幅に改定することに成功した。この結果はすでに論文としてまとめており、現在査読中である。またガンマ線背景放射データの分布関数の高次モーメントに関しても研究を進めており、来年度には結果をまとめられるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは現在展開中であるガンマ線背景放射データの高次モーメントの研究を進め、期間内の完成を目指す。またDark Energy Survey以外のサーベイ計画による、複数の銀河カタログなども用いた包括的なクロス相関の解析をおこなう。それらの解析結果を、先行研究で構築済みの各種天体(ブレーザー、星形成銀河、スターバースト銀河等)の光度関数モデルを駆使してできる限り正確に解釈をする。さらには暗黒物質対消滅成分も含めて、現時点での最高感度の達成を目指す。 このようにして構築したデータ解析、そしてその結果の理論的理解の手法を、高エネルギーニュートリノのデータへも適用し、該当分野における全く新しい解析方法の提唱をおこなう。 同時にサブハローのモデル化に関しても、天の川銀河ハローの形成史への依存性も含めた上で議論を重ねモデルのさらなる精密化をおこなう。さらには通常の「冷たい」暗黒物質以外の候補にも拡張し、対消滅以外の探査方法についての可能性についても調査を進める。
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