2018 Fiscal Year Annual Research Report
過酷環境下における大強度パルスミューオンビーム診断手法の確立
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17H04841
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
上野 一樹 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (20587464)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 素粒子実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
J-PARCで実施する計画のミューオン電子転換過程探索実験(COMET)は10^-16以下の分岐比感度を目指しており、この達成には世界最大級大強度パルスミューオンビームの実現および最適化が必須である。最適化には専用のビーム診断が不可欠であり、現在そのための高分解能検出器開発を進めている。しかし、これまでにない大強度ビームであるが故、(1)取得ビームレート最適化のためのジオメトリ構築、(2)検出器の放射線耐性の確保、(3)粒子識別手法の確立が課題となってくる。本研究では、これらの課題の解決を進めている。 (1)については、検出器におけるヒットレートを2桁以上下げることを目標に進めている。シミュレーションスタディを進め、特にビームブロッカーの形状についてのデザインを進めた。現時点で約1桁の低減に成功しており、さらに1桁低減させるための研究を継続中である。 (2)については、安全率込で実験期間中において10^12n/cm^2の中性子量、1kGyのガンマ線吸収線量が見積もられており、それらに耐えられる信号処理システムの構築を目標とした研究を進めている。ソフトエラー対策を施したFPGAファームウェアの構築を進め、実際に照射試験を行い、実機でも有用であることを確かめた。更なる改良も見込んでいるが、現時点で最低ラインはクリアしていると考えている。ハードエラーに耐えうるパーツ選定も必須であるが、様々な民生パーツに対した照射試験を複数回行い、概ね実機に使用可能である候補を見つけることができた。 (3)については、検出器信号波形情報およびエネルギー、運動量を用いた手法に加え、飛行時間法を用いることで識別効率が向上することがわかっており、シミュレーション、プロトタイプ機を用いた試験を並行して進めている。さらに時間分解能の向上が有効であることが判明したため、それを踏まえた研究もはじめたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は加速器施設トラブルによる研究の遅れが生じていたため、その分遅れることが予想されたが、本年度の照射試験は順調に進み、放射線耐性パーツの選定、ソフトエラー対策はほぼ終了したため、十分巻き返すことができたと考えられる。他のレート対策、粒子識別手法の確立のための研究については現時点においてはおおむね進捗のある状況であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の進捗状況を基に、引き続き研究を進める予定である。 特に耐放射線信号処理システムについては完成の状態まで進める予定である。一方、レート対策、粒子識別法の確立については、シミュレーションスタディ自体はおおむね進められる予定であるが、実機に関しては予算の都合から完遂までは厳しいと考えられる。そのため、一部だけでも開発を進め、それを用いた試験を行うことで十分な結果が得られることを示すことができれば良いと考えている。 それぞれ、結果はまとめ、発表等も行う。
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Research Products
(3 results)