2018 Fiscal Year Annual Research Report
Control of nematic and topological superconductivity
Project/Area Number |
17H04848
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米澤 進吾 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30523584)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ネマティック超伝導 / トポロジカル超伝導 / 一軸ひずみ / 超伝導の制御 / ランダムネス効果 / 電流効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ネマティック超伝導に関するレビュー論文を執筆し、この分野の現時点での研究動向や問題点をまとめた。 実験面では、まず、ピエゾ素子を用いた一軸性圧力印加装置を用いてネマティック超伝導を制御することを目指した実験を行った。実際に、BiSe系のネマティック超伝導体の導電面内での上部臨界磁場の異方性が一軸性圧力によって大きく変化することを見出した。このことは、一軸性圧力によって確かにネマティック超伝導が制御できたことを意味している。この発見について、現在論文を執筆中である。また、昨年度新しく制作した圧力印加装置について、数値シミュレーションなども加えて論文を出版した。 次に、Sr2RuO4の実験では、電流印加によって、伝導面内の上部臨界磁場が、通常の4回対称の振る舞いに加えて電流と磁場の方向に依存した2回対称な成分を持つようになることを明らかにした。このことは、高磁場において超伝導の面内対称性が変化していることを示唆している。来年度は微細加工した試料を用いて、この性質を確固たるものにして、論文を執筆する予定である。 有機物超伝導体(TMTSF)2ClO4の実験では、導入したランダムネスによって超伝導状態だけでなく状伝導状態の導電性も変化することを見出し、理論の共同研究者とともに論文を執筆した。 さらに、光ファイバー技術を用いたひずみの測定技術を開発し、0.1ケルビンという極低温でもひずみ測定が行えるめどがついた。今後、ネマティック超伝導の実験に応用していく予定である。 他に、トポロジカル超伝導の候補であるアンチペロブスカイト酸化物の試料作製・メスバウアー分光・ミューオンスピン回転実験なども行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の一番の目標であるネマティック超伝導の一軸圧制御について、非常にきれいなデータが取れて、論文化のめどがついた。また、Sr2RuO4で見出した、電流と磁場を両方使うことによる超伝導の制御は、これまでなかった観点での新しい知見である。ファイバーを使ったひずみ測定もこの一年間で大きく進展し、研究に使えるめどが立った。このように、当初の目的の達成のめどが立っただけでなく、新しい手法や観点の研究も進展しつつあり、「当初の計画以上に進展している」と評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ピエゾ素子を用いた一軸性圧力印加装置を用いてネマティック超伝導を制御実験を継続し、データをまとめて論文を執筆・投稿する。 Sr2RuO4の実験では、電流印加による上部臨界磁場の新規な異方性を、微細加工した試料を用いて再度測定する。この性質が確固たるものにできれば、論文を執筆する予定である。 有機物超伝導体(TMTSF)2ClO4の実験では、導入したランダムネスによる比熱への影響の測定を目指した比熱セルの作成を継続する。比熱セルは完成に近づいており、完成すればテスト測定ののち、(TMTSF)2ClO4の比熱のランダムネス依存性を詳細に調べる。 光ファイバー技術を用いたひずみの測定を、ネマティック超伝導の実験に応用する。ゼロ磁場でのひずみの異方性や、磁場中でのひずみの異方性を測定し、ネマティック超伝導と結晶ひずみの関係を明らかにしていく予定である。 トポロジカル超伝導の候補であるアンチペロブスカイト酸化物については、試料の純良化を目指した実験を継続するとともに、比熱測定など超伝導の詳細を調べる実験も継続する。近縁物質の超伝導体の探索も行う。
|
Research Products
(37 results)