2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of thermodynamic roles of hydration structure in protein functions
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17H04854
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
苙口 友隆 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (90589821)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 蛋白質分子 / 水和構造 / 蛋白質ダイナミックス / 分子動力学シミュレーション / X線散乱回折実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、「蛋白質の構造変化過程における水和構造の役割の解明」、「蛋白質の基質認識過程における水和構造の役割の解明」を目的としている。その目的のモデル系として、昨年度から、IgG抗体における抗体認識ドメインであるFvフラグメントの溶媒分子を露わに含んだ全原子分子動力学(MD)シミュレーションを行っている。Fvフラグメントの構造はVHとVLドメインの2つサブユニットから構成され、そのドメイン境界には抗体結合部位を有する。抗体結合部位は疎水性ポケットと、10残基程度のループからなるCDRH3領域から構成され、CDRH3領域の柔らかい構造が多様な抗体認識機構を可能にする。さらに、近年、X線結晶構造解析によりCDRH3領域が疎水性ポケットに蓋をしている構造(閉構造)が明らかにされ、その構造がIgG抗体の抗体結合抑制状態に相当しているのではないかと提案されている。本MDシミュレーションでは、CDRH3領域が閉まる構造変化が溶液中において実際に自発的に起きるか、また、そのメカニズムを明らかにすることを目的として、CDRH3領域が疎水性ポケットに蓋をしていない構造(開構造)と閉構造の両方に対して1 usのMDシミュレーションをそれぞれ4本行った。その結果、CDRH3領域が、自発的に開構造から閉構造、もしくは閉構造から開構造へ構造変化を起こすイベントが数回観察することに成功した。詳細な解析により、2つのドメイン間が開閉するドメイン運動が起きており、そのドメイン運動とCDRH3領域の構造変化が強く相関していることが明らかになった。また水分子の運動も含めて解析したところ、ドメイン間の構造変化に伴い、CDRH3領域が持つループ構造の表裏の水和構造が変化しており、それによりCDRH3領域が開閉の構造変化を自発的に行うことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、本年度はFvフラグメントの全原子MDシミュレーションを行い、その抗体結合抑制を制御する構造変化、およびに、その動作メカニズムに水和構造が深く関わることを明らかにしている。現在、さらなる解析と並行して、論文執筆作業を行っている。また、電子顕微鏡実験によって得られている酵素構造中の二次構造安定性を再現する、水分子力場モデルと蛋白質力場モデルの組み合わせを見出しており、その結果についても論文執筆作業を行っている。したがって、現時点では研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
Fvフラグメントについては、抗体結合型のX線結晶構造が得られているため、今後はCDRH3領域の開構造について抗体結合過程のMDシミュレーションを行い、結合における水和構造変化とその役割を解析する予定である。自然なMDシミュレーションでは抗体結合を引き起こすことは困難が予想されるため、MD手法の開発を行う必要もあると考えている。 また、初年度において開発した力場モデルは、アミノ酸側鎖の電荷パラメータに対しては最適化を行ったものの、主鎖の電荷パラメータに対しては、結晶構造解析データの整理が不十分であったため行っていない。アミノ酸主鎖は2次構造形成等、蛋白質の構造形成において重要な役割を果たすため、その電荷パラメータの決定も重要である。本年度は、結晶構造解析データを再整理することにより、アミノ酸主鎖に対して実験水和構造を構築し、それを用いてアミノ酸側鎖の電荷パラメータを決定する。また、電荷決定の計算プロトコルにおいては、真空中での量子化学計算から決めた静電ポテンシャルを用いたため、窒素原子に対する実験水和構造を一部再現することができなかった。今年度は、陰溶媒を用いた量子化学計算を電荷決定の計算プロトコルに採用することで、この問題についても改善を行う。
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[Journal Article] Diffraction apparatus and procedure in tomography X-ray diffraction imaging for biological cells at cryogenic temperature using synchrotron X-ray radiation2018
Author(s)
Amane Kobayashi, Yuki Takayama, Koji Okajima, Mao Oide, Takahiro Yamamoto, Yuki Sekiguchi, Tomotaka Oroguchi, Masayoshi Nakasako, Yoshiki Kohmura, Masaki Yamamoto, Takahiko Hoshi, Yasufumi Torizuka
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Journal Title
Journal of Synchrotron Radiation
Volume: 25
Pages: 1803-1818
DOI
Peer Reviewed
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