2017 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外波長領域で開拓する地上オーロラ光学観測:昼側磁気圏可視化への挑戦
Project/Area Number |
17H04857
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
西山 尚典 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (00704876)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近赤外分光観測 / 地上観測 / オーロラ / 大気光 / 中間圏界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、最新の近赤外観測技術を駆使して、地上光学観測による日照下でのオーロラ観測を開拓する事である。しかしながら、この波長領域では最新のオーロラ分光観測が行われておらず、最も基本的な発光スペクトルですら明確ではなく、フィジビリティスタディーが困難な状況であった。 そこで今年度は当初予定を一部変更し、1.0-1.6μmにおける精密なオーロラ発光スペクトルの測定/取得を目指して、近赤外オーロラスペクトログラフを製作した。具体的には、1次元のInGaAsラインセンサとCzerny-Turner型分光器を組み合わせたスペクトログラフのハード/ソフトの開発、国内試験観測、キャリブレーションを実施した。また、このスペクトラグラフは2018年2月に南極昭和基地に申請者の手により設置され、連続観測を同月末より開始した。 現在のところ、観測データ中にオーロラ現象に対応する発光スペクトルの特定はされていないが、今後も観測継続して未調査領域である1.0-1.6μmのオーロラ発光スペクトルの精密な基礎データを取得を目指す。また、2018年3月末までに1.5μm付近のOH大気光の3-1バンドなどの代表的な大気発光が観測されており、絶対発光強度や絶対波長も先行研究の値とほぼ一致している。これらのOH大気光のデータを利用して、バンド内の輝線の発光強度比から中間圏界面の大気温度(OH回転温度)の推定が期待できる。特に南極上空では近赤外領域の吸収を担う水蒸気量が少ない為、国内の試験観測時に比べてS/Nや特定できる輝線の種類などで優れている事が確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初予定を一部変更し、1.0-1.6μmにおける精密なオーロラ発光スペクトルの測定/取得を目指して、近赤外オーロラスペクトログラフを製作した。絶対波長や感度のキャリブレーション、試験観測を国内で実施した後、この測器を南極昭和基地に輸送し、2018年2月末より連続観測を開始した。すでに、1.5μm付近のOH大気光の3-1バンドなどの代表的な大気発光が観測されている。絶対発光強度や絶対波長も先行研究の値とほぼ一致しているため、観測機の性能は問題なく発揮されていると考えられる。今後はオーロラ現象に対応する発光スペクトルの特定が課題となる。 また、近赤外領域における大気散乱光の数値モデルの整備や、将来的に地上光学観測に使用予定の2次元InGaAsアレイや制御用PC、および観測ソフト開発用ライブラリを購入した。これらの基本動作確認は一通り終了しており、次年度以降の近赤外観測のフィジビリティスタディーや新たな地上光学観測機器の検討/開発の準備は完了している。 以上の経過を鑑みて、一部計画の変更はあったものの計画全体としては「概ね順調に進展している」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2018年10月末まで近赤外線オーロラスペクトログラフの観測を継続し、オーロラ現象に対応する1.0-1.6μmでの発光スペクトルの特定を目指す。オーロラのスペクトルが取得出来次第、大気散乱光の数値モデルの計算と組み合わせた日照下でのオーロラ地上観測のフィジビリティスタディーを行う。その結果に基づき、最終的な光学観測機器の仕様やデザインの検討を共同研究者との議論を続けながら進めていく。また、2次元のInGaAsアレイを用いて、現況のオーロラスペクトログラフのイメージング化を行う。観測ソフトは購入したライブラリを用いて開発し、将来的なオーロラ観測にも拡張できるような汎用的なソフトを作成する。 これらに加えて、すでに取得されているOH大気光のスペクトルデータを活用して、中間圏界面の大気温度の導出手法を確立する。昭和基地のライダーやOH大気光分光計および衛星データとの比較を進める事で、南極上空の中間圏界面のダイナミクスについても議論可能なデータベースを構築する。
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