2017 Fiscal Year Annual Research Report
超解像時空間分解ドップラートモグラフィを用いた磁気再結合の微細構造形成過程の解明
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17H04863
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田辺 博士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (30726013)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 磁気リコネクション / プラズマ診断 / コンピュータトモグラフィ / イオン加熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、太陽フレア等の爆発現象で知られる、磁力線のつなぎかわり(磁気リコネクション、磁気再結合)に伴うエネルギー変換過程について、特にリコネクション平面に対して垂直成分の磁場が存在する際にX点近傍で観測される、微細構造形成過程に焦点を当てた研究に取り組んでいる。本研究で焦点をあてる微細構造とは、東京大学-MAST共同研究(H. Tanabe et al. Phys. Rev. Lett. 115, 215004, (2015))で近年報告されたような、磁気リコネクションの起点となるX点近傍に形成される加熱分布の微細構造である。同過程に類似した現象は、東京大学の室内実験でも高速度カメラ可視光画像等でも報告されてきたが、発光分布ではなく加熱をクリアに明らかにする研究はこれまで十分になされてこなかった。 本研究は、若手研究B(15K20921)において、X点近傍に空間分解能を集中した実験でMAST共同研究成果に類似した傾向が得られ始めたことに着想経緯があり、本研究課題の補助を得てさらなる推進に着手した。マルチスリット分光法を応用した高スループット・高空間分解分光システム構築技術をさらに発展させ、3列スリット入射型96CH分光システムを本格的にリコネクション実験に投入して物理解明実験を推進するとともに、さらなる超解像化として5列スリット入射型320CH分光システムの開発に着手した。また垂直読み出し式のICCD検出器では時間分解測定ができないため、現象の再現性仮定が不要な新システムとして、高速度カメラと高繰り返し型イメージインテンシファイアを用いた時間分解イオンドップラートモグラフィ計測システムの開発にも着手、心臓部となる高速ゲートインテンシファイアについては複数社モデル(浜松・NAC等)製品のデモ機実験を実施し、最終的に最速500kfpsが可能なNAC社UViの調達を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の2017年度は、基盤S(15H05750)で実施されるプラズマ合体・リコネクション実験装置TS-3のシャットダウン・新装置へのアップグレードのスケジュールを考慮し、同シャットダウンが行われる10月までは若手研究B(15K20921)で開発した96CHマルチスリット分光システムを本格運用する形で研究を推進し、さらなるアップグレードによる超解像分光システムの開発については年度後半にシフトさせる形で一部研究計画の変更を行った。イオンドップラートモグラフィ計測の時間分解化のための高速ゲートインテンシファイアの調達については、単体では本研究課題最大の予算投資となるため、年度前半にデモ機を用いた性能比較実験を集中的に行った後に発注を行い、アップグレード工事完了後に納品となる形で調達を行った。 立ち上げ直後の新実験TS-3U(TS-6)のプラズマ性能については、年度終盤にファーストプラズマ生成のため最小-最大イオン温度レンジが想定から今後大きく変化する可能性があったため、年度内は既設設備の分光器の入射スリットを改造する形で超解像分光システムの立ち上げを行い、性能向上のための大型回折格子調達についてはTS-3U(TS-6)実験動向に合わせられるよう繰越制度を活用した。心臓部となる、コア径/クラッド系が200μm/240μmの光ファイバーを320本、25mm×7mmの微小構造の中に、列間隔1mmで5列×64本(ファイバー間300μmピッチ)で格納するマルチスリット型ファイバーバンドルの製作は容易ではなかったが、無事年度内での製作を完了した。新実験装置TS-3U(TS-6)は、2017年度内は電源系・ガス系配線・運転シナリオ開発中のため、年度内本格実験投入には至らなかったが、初年度目標である翌年度運用の要求性能を満たすシステム開発は完了したため、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究と別課題で行われていた実験装置本体のアップグレードTS-3U(TS-6)装置建設および、プラズマシナリオ開発については2017年度末で合体運転成功まで到達したため、2018年度より開発した超解像イオンドップラートモグラフィ計測を本格運用し、磁気リコネクションの微細構造形成過程を明らかにする実験を推進する。学内工作室で製作中の集光レンズ固定治具等については、2018年度よりTS-3U(TS-6装置)に取り付け可能となるため、2018年度より同特注治具が完成次第本格的に実験導入を開始する。 同新実験のため、研究室内では別途並行して150CH磁気プローブ及び、浮遊電位分布測定系等の構築が進行しているため、イオンドップラートモグラフィ計測系で得られたデータに加えてそれらの測定データも参照し、随時X点・電流シート構造や、ガイド磁場リコネクションにおけるポテンシャル四重極構造等をを同定しながら実験を行う。磁気リコネクションのX点や電流シート近傍で観測される微細構造については、前年度までに実施した予備実験において、イオン種の質量数やリコネクション平面に垂直なガイド磁場成分の強度に依存した、ホール効果の極性効果の影響を示唆する興味深い可視光発光分布計測が既に得られているが、発光分布については温度・密度どちらの効果がより顕著に働いて同構造が形成されているのか不明瞭な問題があったため、開発したドップラートモグラフィで直接温度を明らかにすることにより、同微細構造形成の詳細を明らかにする。 2018年度後半より、すでに査読を通過している第27回IAEA核融合エネルギー国際会議(FEC2018)をはじめとして、米国物理学会やプラズマ核融合学会等で研究成果の公表を開始し、年度末にかけて論文投稿を実施する(Nuclear Fusion等)。
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Research Products
(21 results)
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[Presentation] トカマク合体を用いたリコネクション加熱分布計測2018
Author(s)
田辺博士, 波多野博法, 林拓巳, 曹慶紅, 姫野俊一, 兼田泰志, 秋光萌, 澤田明日香, Anup Borade, 洪重奉, Setthivoine You, 井通暁, 小野靖
Organizer
第25回ひので・実験室研究会
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[Presentation] Recent progress of magnetic reconnection research in high field merging experiment using 2D imaging diagnostics2017
Author(s)
H. Tanabe, T. Yamada, T. Watanabe, K. Gi, M. Inomoto, R. Imazawa, M. Gryaznevich, R. Scannell, N. Conway, C. Michael, B. Crowley, T. O’Gorman, J. Harrison, I. Fitzgerald, A. Meakins, N. Hawkes, K. G. McClements, C. Z. Cheng, Y. Ono and the MAST team
Organizer
1st Asia-Pacific Conference on Plasma Physics (AAPPS2017)
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] 実験室リコネクションのその場計測で見られる加速・加熱について2017
Author(s)
H. Tanabe, T. Yamada, T. Watanabe, K. Gi, M. Inomoto, R. Imazawa, M. Gryaznevich, the MAST team, H. Koike, H. Hatano, C. Z. Cheng and Y. Ono
Organizer
磁気リコネクション・粒子加速研究会
Invited
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