2017 Fiscal Year Annual Research Report
キラル敏感な新規時間分解分光法の開発による分子キラリティーのダイナミクスの解明
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17H04865
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
奥野 将成 筑波大学, 数理物質系, 助教 (00719065)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | キラリティー / 非線形分光 / 分子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、新規に透過型のヘテロダイン検出キラル振動和周波発生装置を構築した。従来の反射型の分光装置と異なり、フレネル係数などを考慮することにより、透過信号を高効率で取得可能な装置を構築した。代表的なキラルな有機溶媒であるリモネンの純液体について、CH伸縮振動領域について測定を行った。局所発信器からの電場と、リモネンからのキラル振動和周波信号の良好な干渉をスペクトル領域で測定できた。さらに、R体とS体のエナンチオマー同士から、位相が反転した信号を得ることができた。本年度に構築した透過型のヘテロダイン検出キラル振動和周波発生装置の開発は世界で初めてであり、極めて高感度にキラリティーを検出できる分光装置が開発できたといえる。 また、反射配置でのキラル振動和周波信号について、その偏光依存性を測定することにより、信号光がバルク相に由来するのか、界面相に由来するのかを容易に判断できる手法を見出した(現在論文投稿中)。キラル振動和周波信号はキラルなバルク相からも、キラルな界面相からも信号が発生可能であり、信号の由来を区別することはこれまで困難であった。バルク相から信号が発生するリモネン純液体と、界面から信号が発生するらせん構造を持つポリマーの薄膜について、全く異なる偏光依存性を示すことを実験的に示した。これとあわせて、バルク相と界面相について、キラル振動和周波信号の偏光依存性を定式化し、実験とよく一致することを示した。さらに、らせん構造を持つポリマーの薄膜から発生したキラル振動和周波信号は、電子非共鳴条件下で発生し、対称ラマンテンソルに由来することが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り透過型のヘテロダイン検出キラル振動和周波発生分光装置の構築に成功した。局所発信器からの電場と試料からの振動和周波信号の干渉を、分光器によって干渉縞として得ることができた。このように新奇な装置開発に成功し、順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、平成29年度に構築した装置にポンプ光を導入することにより、時間分解測定を実現する。また、従来の反射型ヘテロダイン検出キラル振動和周波発生分光装置に対してもポンプ光を導入することを試みる。
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