2018 Fiscal Year Annual Research Report
キラル敏感な新規時間分解分光法の開発による分子キラリティーのダイナミクスの解明
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17H04865
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
奥野 将成 筑波大学, 数理物質系, 助教 (00719065)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | キラリティー / 非線形分光 / 時間分解分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、ヘテロダイン検出のキラル振動和周波発生分光装置のさらなる高感度化および生体試料水溶液への応用を試みた。 検出感度の向上という点で、代表的なキラリティーを有する有機液体のであるリモネンの純液体を、サブ秒の時間分解能で取得することが可能となった。これは、入射光および信号光の偏光純度が向上し、さらに局所発振器電場の強度を最適化し、信号光との干渉を適切に行えるようになったからである。この装置を用いて、さまざまな厚みの液体試料を測定し、1 mmから1 cmの厚みの試料について、位相がずれることなく、同様の信号が得られることを確認した。 一方、ICCD検出器を用いて、1~10 ms程度の露光時間での信号取得を可能にするため、さらなる高感度化をはかったが、検出器に由来するノイズおよび干渉信号が発生し、信号を明瞭に観測することができなかった。 また、生体試料への応用を行った。測定したのはキラリティーを持つアミノ酸であるフェニルアラニンおよびロイシンの水溶液である。数100 mMの濃度をもつ濃厚溶液を測定したにもかかわらず、CH伸縮およびNH伸縮振動に由来するキラルVSFG信号を測定することができなかった。サブ秒でリモネンの信号が得られ、数分~10分の取得時間でこれらのアミノ酸溶液の信号が得られなかったことから、透過配置においてバルク相のキラルVSFGを与える反対称ラマンテンソルが、これらの分子について著しく小さいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間分解分光を可能にする短時間での露光時間を十分に達成しているといえる。そのため、適切な励起光パルスを試料へと入射することで、時間分解キラル分光が行える可能性が十分にあるといえる。一方、生体試料からの信号が非常に微弱であることが示唆された。この問題を解決するためには、電子共鳴条件を用いた、振動電子二重共鳴キラルSFG分光による測定の可能性を考える必要性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が研究機関を異動したため、研究環境が大きく変わったことから、研究計画を変更する必要がある。キラリティーに敏感な新規時間分解分光を開発するという点では変わらないが、振動和周波発生分光法ではなく、第二次高調波発生および電子和周波発生によるキラリティーの高感度検出を検討する。それによって、電子状態のキラリティーを高感度に検出し、電子励起に伴うキラリティーの変化を過渡的にとらえる分光法を開発することを目指す。
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