2017 Fiscal Year Annual Research Report
金属レドックスアシストに基づく新たな触媒的アライン化学
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17H04868
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村上 慧 名古屋大学, 物質科学国際研究センター(WPI), 特任准教授 (90732058)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アライン / 遷移金属触媒 / 多環芳香族炭化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はクロロフェニレンの二量化反応の研究を中心として行なった。本反応ではパラジウムを触媒として用い、クロロ基を足がかりとすることによって、環化反応が進行し、トリフェニレン骨格を有する生成物が得られる。今回、特に収率の向上や反応機構解明を行なった。適切なホスフィン配位子を用いることによって、収率が大幅に向上することを見つけた。本反応の反応機構としては、パラダサイクル、もしくはパラジウムーアラインを活性種として経由することが想定される。実験的にはどちらの機構も矛盾せず、解明には至っていない。そのため現在計算科学を用いる反応機構解析を行なっている。なおハロアレーンのようにフェニレンとは異なる基質においては、パラジウムーアラインを経由したと考えることができる異性体比で生成物が得られており、パラジウムーアラインが生成しうる反応条件であることを確認した。 新しい形式の二量化反応である本反応を活かして、ナノグラフェンの短工程合成にも成功した。すなわちペンタフェニレンの二量体に対して、酸化的条件下、反応を行うことにより、効率的に縮環反応が進行し、対応するナノグラフェンを高い収率で得ることができた。加えて、研究の過程で新しい縮環反応を見つけた。本反応を用いることにより、一挙に歪んだ多環芳香族炭化水素を合成することが可能となった。通常平面性の高い多環芳香族炭化水素に立体性を付与するものであり、これまでにない三次元のナノカーボン分子の創生につながると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハロアレーンの反応から、アラインが発生している可能性が示唆されており、本申請において重要な知見を得た。加えて、ハロゲン化されたフェニレンの反応からこれまでにない多環芳香族炭化水素の合成に成功しており、研究目標の一つである新しい機能性分子合成を実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、アラインの発生と利用に関して研究を行う。加えて、本研究の過程で見つけた新しい反応を発展させることにより、未知の機能性多環芳香族炭化水素の合成法の確立に注力する。
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