2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of photo-electronic-magnetic functions by anisotoropic assembly of luminescent open-shell molecules
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17H04870
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
草本 哲郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90585192)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光機能 / ラジカル / 発光 / 光安定性 / スピン |
Outline of Annual Research Achievements |
ラジカル分子の特異なスピン多重度に基づく発光は、高エネルギー効率が期待され、基礎科学のみならず発光デバイス創製などの応用科学にも大きな変革をもたらす可能性があるが、その研究は黎明期にあり、発光性ラジカルの新物質・新材料開発が研究深化・発展のための重要課題である。本研究では高い光安定性を有する発光性ラジカルPyBTMの独自開発を基に、金属イオンとの配位結合を利用して発光ラジカルを一次元あるいは二次元状に異方集積したナノ材料を創製する。光励起状態における複雑なスピン相関と異方的構造に起因する、新奇な光・電気・磁気機能を実現する。 本年度は一次元構造を形成可能な発光性ラジカルとして、bis(3,5-dichloro-4-pyridyl)(2,4,6-trichlorophenyl)methyl radical (= bisPyTM)を設計・合成した。bisPyTMの化学的および物理的特性を様々に調べた結果、bisPyTMがPyBTMにくらべ長波長の蛍光を示すこと、低温において固体発光を示すこと、電子アクセプタ―性を有すること、PyBTMよりも高い光安定性を有すること、を明らかにした。特に光安定性については閉殻発光分子であるTIPS-ペンタセンよりも高いことを見出した。またbisPyTMの二つの窒素原子がルイス酸やプロトンを受容することを見出した。これはbisPyTMが一次元構造を形成し得ることを示唆している。また密度汎関数理論や振電相互作用密度解析により、bisPyTMやPyBTMの輻射および無輻射失活の相対的な速度を理論的に見積もることが可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする一次元構造形成を実現し得る新規な発光ラジカルbisPyTMを合成することができた。予備的ではあるが、このラジカルの二つの窒素原子が金イオンに配位し2核錯体を形成することを見出しており、金イオンと金属配位部位を2か所有する対配位子を用いることで、bisPyTMからなる一次元鎖構造体が形成できる可能性があると考えている。このことから研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
bisPyTMと金イオンを用いて一次元構造体の合成を進める。対配位子の構造を様々に変えて様々な構造体を合成し、化学的に安定な一次元構造体を作ることを目指す。合成に成功した後、ZPS,IR,ラマンスペクトルなどの各種分光法、SEMやTEMの電子顕微鏡、ARMやSTMのプローブ顕微鏡、あるいは粉末X線構造解析や電子線回折などの回折法を用いて、一次元構造体の組成や構造、構造周期性などを明らかにする。また吸収・発光スペクトル、発光量子収率、発光寿命測定などによりナノワイヤの電子物性と光物性を調べる。特に、一次元構造に起因する新奇光物性に着目して研究を進める。加えて新たな発光ラジカルの物質合成にも着手する。
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Research Products
(9 results)