2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of photo-electronic-magnetic functions by anisotoropic assembly of luminescent open-shell molecules
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17H04870
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
草本 哲郎 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 准教授 (90585192)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ラジカル / 発光 / 一次元 / magnetoluminescence / 磁場効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高い光安定性を有する発光性ラジカルPyBTMの独自開発を基に、発光ラジカルの新しい光機能の創出、ならびに金属イオンとの配位結合を利用して発光ラジカルを一次元あるいは二次元状に異方集積したナノ材料の創製を目指す。光励起状態における複雑なスピン相関と異方的構造に起因する、新奇な光・電気・磁気機能を実現する。 本年度は、昨年度開発した発光ラジカルbisPyTMを用いて、銅イオンとの錯形成反応により、一次元鎖構造を有するラジカル-銅金属錯体を合成することに成功した。単結晶X線構造解析を用いて一次元鎖錯体の構造の温度依存性を調べた結果、銅イオン回りのヤーンテラー歪みが温度に依存して変化すること、またこれに連動して配位子のπ共役構造が変化することが明らかとなった。特に100 K付近においてヤーンテラー軸の配向が変化することを見出した。磁気測定の結果、この一次元鎖錯体では銅とラジカル間に強磁性的な相互作用が働くこと、加えてヤーンテラー軸の配向変化と共にスピン軌道の配向も変化し、それが磁気特性変化に繋がることを見出した。すなわちこの錯体は、銅イオンのヤーンテラー歪み・配位子のπ共役・磁気特性が協奏したユニークな物性を示す物質であることを明らかにした。 また、発光ラジカルPyBTMを0.05wt%ドープした分子結晶が、室温発光量子収率89%という驚異的に高い値を示すことを明らかにした。さらに10wt%ドープした試料では、低温において発光スペクトルが顕著な磁場依存性を示す(magnetoluminescence)ことを見出した。これはラジカルの発光の磁場効果の初観測であり、ラジカルにおけるスピンと発光が協奏した物性を初めて実現することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
目的とする発光ラジカルからなる一次元鎖錯体を合成することができた。さらにこの錯体がこれまでにないユニークな物性として、銅イオンのヤーンテラー歪み・配位子のπ共役・銅とラジカルに由来する磁気特性が協奏した機能を示すことを明らかにした。加えて、これまで報告例が無かった、ラジカルでのスピン・発光協奏物性としてmagnetoluminescenceを実現することができた。これらは当初の計画を超えた大きな成果であり、研究は計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
bisPyTMと金属イオンからなる新しい一次元錯体の合成、特に発光機能を示し得る錯体の合成を進める。中心金属として亜鉛や金などd10電子系の金属イオンを用いることを予定している。 また今年度実現したluminescenceの根本要因を明らかにするために、発光スペクトルに加えて発光寿命の磁場および温度効果を調べる。また量子力学シミュレーションに基づき励起状態ダイナミクスを明らかにする。 他の発光ラジカルについても同様の試験を行い、このmagnetoluminescenceがPyBTMに固有の現象なのか、それとも発光ラジカルに普遍的な現象であるのか、を明らかにする。
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Research Products
(14 results)