2018 Fiscal Year Annual Research Report
第一周期遷移金属の高度利用のための触媒設計と高難度分子変換反応の開発
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17H04877
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩井 智弘 北海道大学, 理学研究院, 助教 (30610729)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 第一周期遷移金属 / 配位子 / ビスホスフィン / ポリスチレン / ニッケル / 銅 / 酸フッ化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球上に豊富に存在する第一周期遷移金属の触媒利用は、環境調和型有機合成の観点から近年注目されている。しかし、第一周期遷移金属触媒は凝集や不均化によって失活しやすい。本研究では、固体や分子の特性を活かした高活性第一周期遷移金属触媒の設計合成と高難度化学反応の開発に取り組んでいる。 本年度は、ニッケル/銅協働触媒による酸フッ化物を用いたビニルアレーンの還元的アシル化反応を開発し、その成果を学術論文として発表した。酸フッ化物/ニッケル錯体からアシルニッケル種が、ビニルアレーン/ヒドロシラン/銅錯体からアルキル銅種が触媒的に生成して所望の反応が進行していると考えている。強電子供与能を有し、嵩高く剛直な構造を特徴とする1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ベンゼンDCYPBzをニッケル触媒の配位子に用いることが、反応の円滑な進行に重要である。酸フッ化物は他の酸ハロゲン化物と比べて穏やかな反応性を示すことから、本ヒドロアシル化法の広い官能許容性や基質適用性が特筆される。 さらに、実施者が独自に開発したポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子PS-DPPBzが、ニッケル触媒による芳香族カルバメートの脱炭酸を伴うアニリン合成に有効なことを見出した。対応する可溶性ビスホスフィンを用いると反応が全く進行しないことから、配位子高分子化の効果は極めて大きい。反応系中には外部塩基やフリーアミンが存在しないことから、優れた官能基許容性を示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニッケルと銅の協働作用に基づく新規合成反応を開発した。二種の金属触媒を用いる反応においても、支持配位子の適切な選択が活性種制御に重要なことを明らかにした。こうした知見は、重奏的な触媒作用よって高難度化学反応の実現を目指す新たな指針となる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに引き続き、配位子設計を基盤とする第一周期遷移金属触媒の開発を進める。とくに、固体の特性を利用した触媒開発に注力する。
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