2019 Fiscal Year Annual Research Report
第一周期遷移金属の高度利用のための触媒設計と高難度分子変換反応の開発
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17H04877
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩井 智弘 北海道大学, 理学研究院, 助教 (30610729)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第一周期遷移金属 / 配位子 / ビスホスフィン / ポリスチレン / イリジウム / 触媒 / 水素移動型還元反応 / 脱水素化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球上に豊富に存在する第一周期遷移金属の触媒利用は、環境調和型有機合成の観点から近年注目されている。しかし、第一周期遷移金属触媒は凝集や不均化によって失活しやすい。本研究では、固体や分子の特性を活かした高活性第一周期遷移金属触媒の設計合成と高難度化学反応の開発に取り組んでいる。本年度は、この触媒設計概念を多核化しやすい金属-ヒドリド錯体を活性種とする有機合成反応の開発に展開した。その結果、第一周期遷移金属ではないものの、イリジウムを触媒とする高効率な「水素移動型還元反応」ならびに「アクセプターレス脱水素化反応」を開発した。 今回実施者は、1,4-ジオキサンを水素源とするイリジウム触媒アルケン選択的水素移動型還元反応を開発した。立体的嵩高さと高電子供与能を特徴とする1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン(DCYPE)を配位子に用いると反応が効率よく進行する。本触媒系は、2-プロパノールやギ酸等のプロトン性水素供与体を用いる既存触媒と異なり、C=O, C=N, C≡N結合等の極性不飽和結合が存在していてもアルケン選択的に還元が進行する。また、活性サイトの空間的孤立化に有効なポリスチレン架橋ビスホスフィンPS-DPPBzを配位子に適用でき、再利用可能な不均一系イリジウム触媒を与える。 さらに、PS-DPPBzから調製した固定化イリジウム触媒が、含窒素複素環化合物のアクセプターレス脱水素化反応に有効なことを見出した。既存触媒では適用の難しいN-置換インドリンの脱水素化にも適用できる点が特筆される。本触媒系では、N-置換インドリンの窒素隣接C(sp3)-H結合の低原子価イリジウム錯体への酸化的付加を経由する機構を提唱している。PS-DPPBzの高分子効果によって触媒休止種であるヒドリド架橋二核イリジウム錯体の生成が抑制され、続く水素放出の過程が促進されていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イリジウム-ヒドリド錯体を活性種とする水素移動型還元反応ならびに脱水素化反応において、配位子の高分子効果によって触媒性能が向上することを明らかにした。この知見をもとに、第一周期遷移金属触媒による反応開発に展開することが今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、固体と分子の特性を活かした第一周期遷移金属触媒の開発に取り組む。「活性サイトの空間的孤立化」に基づく触媒設計指針を、有機高分子に加えて、半導体特性を有する金属酸化物にも展開する。また、三次元的広がりを有するナノ規制空間を特徴とする分子触媒の開発も進める。
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Research Products
(4 results)