2017 Fiscal Year Annual Research Report
自己組織化によりトポロジー効果を増幅する新規環状高分子の探索と系統的機能材料開発
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17H04878
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 拓矢 北海道大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30525986)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自己組織化高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高分子の『かたち』に由来する特性(トポロジー効果)が自己組織化によって増幅されるという発見に基づき、『トポロジー効果』増幅を発現する新しい環状高分子系の探索と新奇機能材料の系統的開発を目的とする。完全共役構造を有する環状ポリチオフェンは主鎖中で無限長の共役系を有することからユニークな特性を示すことが知られている。集光特性やエキシトンの非局在化、およびフラーレン分子を包接した複合体の自己組織化において直鎖状ポリチオフェンとは異なる物性を発現することが報告されており、環状構造が与える新奇特性の探索が進められている。本研究では、ポリチオフェン誘導体の中で最も研究・開発が進められているポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を用いて分子内カップリング反応により全共役型環状P3HTの合成し、その電子的特性を評価することに成功した。得られた生成物の構造は1H 核磁気共鳴(NMR)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)によって測定した。分析SECの測定によって得られたピークトップ分子量から環化による流体力学的体積の減少を確認した。さらに、1H NMR測定から高純度の環状高分子の生成を確認した。次に、MALDI-TOF MS測定により詳細な構造解析を行った結果、目的の構造を有することが判明した。以上の結果から、完全共役型環状P3HTの合成を確認した。また、得られた高分子の物性を直鎖状P3HTと比較することで環状トポロジーが光電物性に与える影響の調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度までに完全共役構造を有する環状ポリチオフェンの合成を達成した。まず、2-bromomagnesio-3-hexylthiopheneとニッケル触媒の金属交換反応により、開始剤を合成した。次に、この開始剤を利用して2-bromo-3-hexyl-5-chloromagnesiothiopheneのGRIM重合を行った。続いて、得られた直鎖状poly(3-hexylthiophene)(P3HT)をsec-BuLiによって両末端のリチオ化を行った後、trimethyltin chlorideにより両末端にトリメチルスズ基を有する直鎖状P3HTを合成した。さらに、希釈条件下でパラジウム触媒を用いた直鎖状P3HTの分子内ホモカップリングにより環化反応を行った。得られた生成物の構造は1H NMRおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定した。SEC測定から得られたピークトップ分子量は直鎖が4,500であったのに対し、環化後は3,600と減少したことからトポロジー変化による流体力学的体積の減少を確認した。さらに、1H NMR測定から直鎖の末端に由来するプロトンピークが消失したことから、高い純度で末端を持たない環状高分子の生成を確認した。次に、MALDI-TOF MS測定によりポリマーの詳細な構造解析を行った結果、環の同位体分布は直鎖と比べて正確に変化したことが判明した。その結果、完全共役構造のP3HTの合成を確認した。また、これらの成果の学会発表等を行っているため、本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、完全共役構造を有する環状ポリチオフェンの物性の分子量依存性の調査を行う。つまり、14~30量体程度のAll-Head-to-Tail型環状P3HTを合成する。それらについてUV-Vis、蛍光、電荷移動度、光電変換効率、CVなどの測定により、光電子物性の評価を行い、環サイズに依存する変化を調べる。さらに、Donor-Acceptor(D-A)型環状高分子の合成を行う。本合成では、開始剤としてアクセプター分子の使用を検討する。アクセプター分子の候補としては、ペリレンジイミドやベンゾチアヂアゾールの誘導体などが挙げられる。合成したD-A型環状高分子に対し、前述の測定により諸光電子物性の評価を行う。また、アクセプターを高分子としたD-A型ジブロック共重合体やチオフェンよりも低い酸化電位有するドナー分子であるセレノフェンを含む環状P3HTの合成および物性評価も検討する。加えて、合成したドナー性の環状P3HTと強い相互作用を示すアクセプター性のカーボンナノチューブ(CNT)との自己組織化を行うことで環の捻れや歪みを解消し、ドナー相およびアクセプター相が非常に大きな面積で接触した光電変換効率の高い素子を構築を目指す。
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Research Products
(64 results)