2018 Fiscal Year Annual Research Report
柔軟性と構造対称性を併せ持つ革新的ラダーポリマーの合成と物性研究
Project/Area Number |
17H04879
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石割 文崇 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00635807)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ラダーポリマー / コンフォメーション変化 / 溶液物性 / 熱物性 / ガス吸着特性 / ガス透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Troeger's base骨格の高効率開環反応を鍵とした、1,5-ジアザシクロオクタン構造を主鎖に持つ、柔軟かつ高規則的という新しい構造特性を有する 新規ラダーポリマーの開発と物性研究を行っている。平成29年度には、エタノアントラセン骨格を有するジアミンモノマーからTroeger's base形成重合により得られるラダーポリマーに対し、ジメチル硫酸とNaOHを作用させることにより、二級アミン構造を有する1,5-ジアザシクロオクタン構造を主鎖に持つラダーポリマーを得た。しかし、上記論文で親ポリマーとして用いたPIM-EA-TBは、エタノアントラセン骨格を有するジアミンモノマーが、異性体の混合物であり、構造不規則性をもつ。そこで、平成30年度には、市販の単一のジアミンモノマー(2,5-ジアミノ-p-キシレンなど)から得られるTroeger's base含有ラダーポリマーの合成と開環反応について検討を行った。2,5-ジアミノ-p-キシレンから得られるラダーポリマーに関しては一段階の反応では完全な開環は達成されなかったが、開環反応を繰り返し行うことで開環率を向上させることができ高対称性のラダーポリマーが得られた。その過程で、1,5-ジアザシクロオクタンの二級アミン部位へのヨードメタンなどでのN-メチル化は、四級化体を生じることなく効率的に進行し、さらに構造対称性を向上させることにも成功した。このポリマーの溶液物性、ガス吸着測定、ガス選択透過性、熱物性などの調査を行っている。これに加え、1,5-ジアザシクロオクタンに対し、ホウ素化合物などのルイス酸を作用させることで、コンフォメーションの固定化が起こり、コンフォメーション挙動の変化が可能であることも見出した。これらの成果を元に、招待講演3件を含む計11件の学会発表を行うに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目の段階で、柔軟性ラダーポリマーの溶液物性、ガス吸着測定、ガス選択透過性、熱物性などの物性検討をスタートさせることができている。また、1,5-ジアザシクロオクタンの二級アミン部位への効率的N-メチル化や、ルイス酸の配位/脱離によるコンフォメーション挙動の変化など、などの思いがけない発見もあり、これらの成果を元に、招待講演2件を含む計10件の学会発表を行うに至った。以上より、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、柔軟性ラダーポリマーの物性の徹底解明と、機能開拓を検討を行う。これまでに合成した,5-ジアザシクロオクタン骨格含有柔軟性ラダーポリマーの高次構造や物性に関しても徹底的な調査を行う。具体的には、固体状態においては、熱重量測定(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)、X線回折測定(XRD)、偏光顕微鏡(POM)観察、動的粘弾性(DMA)測定などの基礎物性測定に加え、熱伝導率や、ガス吸着測定、ガス選択透過特性の評価を行い、高熱伝導性材料や、CO2分離膜などの機能開拓を行う予定である。また、溶液物性に関しては、分子量と慣性半径との関係(コンフォメーションプロット)を調べ、柔軟性ラダーポリマーの溶液中での振る舞い(コンフォメーション)について明らかにすることを目指す。
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