2018 Fiscal Year Annual Research Report
生体親和性バイオナノファイバーと水だけを使用したグリーンな医療材料の創製
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17H04893
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
長田 光正 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (70435402)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノファイバー / 糖鎖 / 蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では次の3つの検討を行っている。(1)バイオナノファイバーのハイドロゲル化におよぼす高温高圧水処理の効果の解明、(2)ナノファイバーの高温高圧水中でのハイドロゲル化のメカニズムの解明、(3)ハイドロゲルの医療材料としての評価。 (1)については、常温の水中に分散した各種バイオナノファイバーが、高温高圧水中でハイドロゲル化する際の、温度、時間などの加熱条件の効果を調べた。昨年度に検討したTEMPO酸化セルロースナノファイバーに加え、今年度はキチンおよび化学修飾されていない純粋なセルロースのナノファイバーについて検討した。昨年度、本研究で製作した高温高圧反応装置を用いて、100℃~200℃の範囲でハイドロゲルを調製し、得られたハイドロゲルの圧縮弾性率、透明度と、高温高圧水中での処理条件の関係を明らかにした。その結果、ハイドロゲルの圧縮弾性率、透明度は、厳しさ係数と呼ばれる温度、時間の関数で予測できることを見出した。 (2)については、バイオナノファイバー物性の基礎情報として、ファイバー長(原子間力顕微鏡)、ファイバー径(電子顕微鏡)、動的粘弾性の測定を行った。また昨年度、本研究で購入したマルチ検出器SECシステムを使用し、原料およびナノファイバーの分子量を測定した。これらの結果から、高温高圧水中でのハイドロゲル化のメカニズムは、基本的にナノファイバー同士の絡み合い箇所の増加による物理ゲルであることを明らかにした。 (3)については、医療材料としての評価のため、ハイドロゲルを任意の形状で作製する検討や、スポンジ状の材料を得る検討を始めた。来年度は、これらを用いた細胞培養評価を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は順調に達成できている。今年度予定していた(1)バイオナノファイバーのハイドロゲル化におよぼす高温高圧水処理の効果の解明、および(2)ナノファイバーの高温高圧水中でのハイドロゲル化のメカニズムの解明の検討を終えた。キチンナノファイバーのハイドロゲル化とそのメカニズムについては、生体材料に関する雑誌である「Cellulose」 (2018) で公表した。また(3)医療材料としての評価の準備として、ハイドロゲルを任意の形状で作製する検討や、スポンジ材料を得る検討を行った。キチンナノファイバーを用いたスポンジ材料の作製に関しては、天然高分子に関する雑誌である「International Journal of Biological Macromolecules」 (2019) で公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究の申請書の内容に従い、昨年度までに引き続いて下記の研究項目について進める 各種バイオナノファイバーの性状測定から、(2)バイオナノファイバーの高温高圧水中でのハイドロゲル化のメカニズムの解明を行う。ハイドロゲルを構成するナノファイバーの分子量、ファイバー長(原子間力顕微鏡)、ファイバー径(電子顕微鏡)動的粘弾性の測定を行う。これらを通して、セルロースやキチンなどの原料の違いが、ゲル化のメカニズムに及ぼす影響を明らかにする。 (3) ハイドロゲルの医療材料としての評価を行う。実際に作製したハイドロゲルやスポンジ材料を用いて細胞培養評価を行う。上記(2)で調べたハイドロゲルの性状が細胞培養に及ぼす影響を明らかにする。
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Research Products
(15 results)