2017 Fiscal Year Annual Research Report
磁気浮上人工心臓における生体情報のセンサレス計測とQOL向上技術への応用
Project/Area Number |
17H04909
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
土方 亘 東京工業大学, 工学院, 准教授 (30618947)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 補助人工心臓 / 磁気浮上 / 血栓 / 血液粘度 / センサレス計測 / 生体情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
補助人工心臓で課題となっているポンプ内の血栓を,新たなセンサや機構を用いずに検出するアルゴリズム作成と,基礎実験を実施した.具体的には磁気浮上型補助人工心臓の電磁石に,正弦波状の電流を重畳し,インペラを強制変位加振させた.ポンプ内に血栓ができると,インペラに生じる減衰力が変化し,重畳した電流とその応答である変位の位相差も,変化すると仮定した.本年度は,この仮定をIn vitro実験で検証した. クエン酸で抗凝固処理した豚血液を磁気浮上遠心血液ポンプで5L/minの条件で循環し,塩化カルシウムでクエン酸を徐々に中和した.当初は,in vitro回路内で微小血栓を作りだすことが困難であったが,塩化カルシウムの投入速度,流量条件,模擬循環回路の材料特性,形状を逐次修正することで,in vitro環境下でもポンプ内に1mm以下の微小血栓を作製することに成功した. 次に,提案する正弦波電流を電磁石に重畳する手法で,血栓検知が可能か検証した.その結果,5回の試行すべてにおいて,循環開始後60分以上経過してから電流と変位の位相差に急激な変化が見られた.位相差が2度変化した時点でヘパリンの投入によって凝固の促進を停止させてから速やかにポンプを停止し,分解したところ,ポンプ内部に微小血栓がみられ,原理的に血栓検知が可能であることを確認した. また,今後,ポンプ内部の可視化を行いつつ血栓検知実験を遂行するため,可視化が可能な血液ポンプを設計し,試作した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定通り,血栓の検知が可能であることをin vitro実験で実証した.また,可視化実験に向けて,ポンプ内部を高速カメラで撮影可能な補助人工心臓も設計し,試作中である.血栓の予兆検知についてはこれからの実施であるが,非常に微小な血栓を検知できていることから,予兆検知も可能であることが示唆されている.
|
Strategy for Future Research Activity |
血栓の検知はin vitro環境下で実現できているものの,人体の生理的な血液粘度変化によっても,電流と変位の位相差は変化する.今後は,血栓と通常の血液粘度変化の違いを認識可能なアルゴリズムを構築する.例えば,位相差の時間変化といった指標を取り入れる予定である.その後,動物実験において,血栓検知の有効性を検証する. また,拍動との同期制御についても,順次,研究を遂行していく予定である.
|