2017 Fiscal Year Annual Research Report
金属酸化物表面反応の瞬時加熱制御によるCMOS分子センサの創出
Project/Area Number |
17H04927
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高橋 綱己 九州大学, 先導物質化学研究所, 学術研究員 (60724838)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 金属酸化物ナノワイヤ / シリコンCMOS / 分子センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,シリコンCMOSデバイス技術と金属酸化物を融合させた独自のセンサデバイスを作製し,高感度・低消費電力な分子センサ基盤技術の創成を目指している.初年度である平成29年度は,シリコンMOS構造上に金属酸化物層を形成するセンサデバイス構造の作製と基本電気特性の取得とともに,金属酸化物ナノワイヤデバイスの課題である金属電極の電気的接触抵抗の改善を行った. 単結晶金属酸化物ナノワイヤ構造が非常に高い分子認識能を有することを受け,当初の研究計画では薄膜構造としていた金属酸化物層を単結晶金属酸化物ナノワイヤ構造に変更した.これに伴い素子作製プロセスも変更し,シリコンMOSキャパシタ上に単結晶金属酸化物ナノワイヤを成長させた新たなセンサデバイス構造の設計・試作を行った.ナノワイヤの成長条件や電極構造を最適化し,単結晶金属酸化物ナノワイヤアレイをゲートとしたシリコンMOSデバイスを作製した.同素子の基本特性である電流リーク特性およびキャパシタンス特性(C-V)特性を取得した. 金属酸化物ナノワイヤと金属電極間の電気的接触(コンタクト)を良好にするための材料設計を行った.コンタクト層を従来の金属から高不純物濃度の金属酸化物に変更することで,金属酸化物ナノワイヤの電気特性を安定して測定できることを示し,同技術の分子センサへの適用で分子センサの高信頼化が可能であることを実証した. 以上の成果はどれも金属酸化物ナノワイヤとシリコンCMOS技術が融合したセンサデバイスの実現に不可欠な基礎技術であり,次年度以降のセンサデバイスによる分子認識につながる非常に重要な知見である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当グループで得られた最新の知見を活かし,当初計画していた金属酸化物薄膜を用いた素子構造から,より優れた分子認識能を示す単結晶金属酸化物ナノワイヤを用いる構造に変更した.そのために素子構造と各種素子パラメータの再設計を行ったが,29年度で新構造素子の作製と各素子パラメータの最適化はほぼ完了しており,また基本特性も取得できている.したがって当初の計画に対する遅れはなく,次年度の目標である分子認識に向けた準備はほぼ整っている.加えて,新素子構造で採用した金属酸化物ナノワイヤへの電気的コンタクト技術についても幅広い分野に有用な成果を挙げることができ,雑誌論文や国際会議において成果発表も行った.以上から,平成29年度までの進捗状況としては当初の計画以上に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,29年度に作製した素子を用いて分子認識(センシング特性)の評価と分子認識能を最大化するための金属酸化物ナノワイヤ表面設計を行う.具体的には,分子の吸着の有無による電気特性(容量ー電圧特性)の変化を測定し,対象分子の電気的な識別に適した動作温度や金属酸化物ナノワイヤの表面処理条件を明らかにする.同時に,熱処理や異種材料などによる金属酸化物ナノワイヤ表面の分子認識能の変調を試みる.評価に際しては,電気特性の変化と分子認識能の変化を区別するために分子吸着・脱離特性や赤外分光測定なども援用し,センサデバイスとしての最適な素子構造・ナノワイヤ表面処理・材料を探る.また,センサデバイス構造としては,MOSFET型(電流-電圧特性で分子検出)とキャパシタ型(容量-電圧特性で分子検出)の両方を同時に検討する.
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Research Products
(18 results)