2018 Fiscal Year Annual Research Report
金属酸化物表面反応の瞬時加熱制御によるCMOS分子センサの創出
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17H04927
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高橋 綱己 九州大学, 先導物質化学研究所, 学術研究員 (60724838)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 単結晶金属酸化物ナノワイヤ / シリコンナノワイヤ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,シリコンCMOSデバイス技術と親和性があり,金属酸化物半導体の分子認識能を活かした分子センサの創製を目指している.本年度は,センサを構成するナノ半導体(金属酸化物およびシリコン)の,電子物性,分子吸着時の電気特性変化,熱物性に注力して研究を行った.具体的には,1) センサ材料として用いる単結晶金属酸化物ナノワイヤ構造体の電子物性の解明,2) 単結晶金属酸化物ナノワイヤセンサデバイスの分子吸着による電気特性変化解析,3) シリコンナノワイヤの電子・熱物性評価を行った. パルスレーザー堆積法(PLD法)を用いて気液固(Vapor-Liquid-Solid: VLS)成長させた単結晶酸化錫ナノワイヤの電気特性評価を通して,酸化錫ナノワイヤの導電性が,結晶中の化学量論的組成からずれることによって生じていることを実験的に明らかにした.同時に,本知見を生かして成長条件の精密な制御により理論的に予想されていた高抵抗なナノワイヤの作製に成功した. 水熱合成法によって成長させた,単結晶酸化亜鉛ナノワイヤの,分子吸着時のノイズ特性を評価した.ノイズ特性には表面準位や電子トラップの影響が現れることが知られており,前年度に取り組んだ電気容量測定と相関がある.分子吸着時に高周波領域のノイズが減少していることが観測され,分子吸着により表面準位密度が低減している可能性を示唆する結果を得た. VLS成長させた,不純物を添加したシリコンナノワイヤの熱伝導率を3ω法を用いて測定した.電極とシリコンナノワイヤの界面熱抵抗を補正することで正しい熱伝導率の値を得ると同時に,不純物添加時においてもナノワイヤ表面におけるフォノン散乱が熱伝導を決定することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子吸着時の金属酸化物ナノワイヤセンサデバイスのノイズ特性評価結果は,金属酸化物半導体を用いた分子センサの動作メカニズムが,分子吸着によるエネルギー準位の変化であることを示唆しており,本研究で目指すセンサの実現に資する結果である.加えて単結晶金属酸化物ナノワイヤの導電性の起源の解明やシリコンナノワイヤ熱物性の評価でも成果を得ており,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において,単結晶酸化物ナノワイヤ表面への分子吸着によるエネルギー準位の変化を示唆する興味深い結果を得た.次年度は,本結果に着目し,更なる解析を行うことで分子認識能のメカニズム理解を進める.また,目指すセンサ構造で不可欠になる,単結晶金属酸化物ナノワイヤの長期安定性を達成するための手法を開発する.研究期間中に得た知見により,センサの金属酸化物半導体部分を薄膜から高感度・高選択性が実現できる単結晶ナノワイヤに変更した.最終年度である次年度は,ナノワイヤの分子認識メカニズムの解明と課題である信頼性向上に取り組む.
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Research Products
(16 results)