2017 Fiscal Year Annual Research Report
光誘起モード変調に基づくテラヘルツフェーズドアレイの実現
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17H04928
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
門内 靖明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (90726770)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / 変調 / 位相 / 導波路 / 光誘起キャリア |
Outline of Annual Research Achievements |
波長の短いテラヘルツ波を通信のキャリアや計測のプローブとして空間伝送するにはビームステアリングが不可欠であり、そのためには広帯域かつ低損失な位相変調器が求められる。本研究では、従来の共振型や屈折率変調型に替わる新たな移相原理として、導波路端面での境界条件を光誘起キャリヤによって変調することで、広帯域かつ低損失にテラヘルツ波の位相を変調する方法を提案し、原理実証を行った。具体的には、平行平板型導波路中をTEモードで伝搬する波動の波数を外部入力に従って連続的に変化させ、一定距離伝搬後に位相変調効果を取り出せる系を構築した。導波路としては平行平板を断面方向にわずかに湾曲させることで多モード伝送が可能となるようにしたうえで、端面に薄い高抵抗シリコン結晶板を設置した。そのシリコン板に背面から近赤外領域の励起光を照射することでImbert-Fedorov 効果を生じさせ、端面に到達したテラヘルツ波の反射角を微小に変化させて波数を微小変化させるようにした。この波数の変化を、一定距離伝搬後に位相の変化として取り出すことができる。それを実測するために、300GHz帯の送信及び受信が可能なベクトルネットワークアナライザを用いて複素透過係数(Sパラメータ)を繰り返し測定する系を構築した。その結果、照射光強度が2W毎平方センチメートルの場合、260~330 GHzで約1°/cmの移相量を得た。また、光量を半減すると移相量は半減するものの振幅はほぼ一定に保たれることを実験的に確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標であった光誘起キャリアに基づく位相変調効果を実験的に確認することができた。ここに至るには、電磁界シミュレーションに基づくデバイスの設計のみならず、300GHz帯ベクトルネットワークアナライザによる測定系の構築を行う必要があったが、ともに計画に従って順調に達成することができた。位相変調効果の大きさは未だ比較的小さいものに留まっており、さらに大きな効果が得られるよう改善を図っていくことが次年度以降の課題である。以上をふまえて、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、変調効果を拡大する手法について検討を深める。具体的には、まず高抵抗シリコン基板に多数の微細穴を開けることで表面積を増大させて光誘起キャリア密度を高めることを試みる。これにより、高い光利用効率を達成して端面反射時の反射角の微小変化量を増大することを目指す。また、多モード伝送可能な導波路断面の形状と寸法がモード波数に与える影響を解析し、反射角の微小変化に対する導波路単位長さ当たりの位相変調効果をより増大させることにつなげる。また並行して、同様のモード波数変調原理に基づく移相器の実装手法として、導波構造の端面ではなく側壁の境界条件を制御する手法についても検討する。例えば、TEモードの波数が側壁間距離に依存することに基づいて、側壁に電気機械的な微小変位を与えて実効的な極板間距離を変化させる方法が考えられる。損失性媒質を通過しないようにすることで低損失な移相器が実現される可能性がある。その際の位相変調器としての性能を移相量、挿入損失、帯域幅、応答速度の観点から実験的に検討しつつ、最終的なフェーズドアレイの構築に向けて空間的な並列アレイ化が可能であるかどうかを検証する。
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Research Products
(1 results)