2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Fiber-Optic High-Speed Distributed Sensors Based on Brillouin Spectral Analysis
Project/Area Number |
17H04930
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
水野 洋輔 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (30630818)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光ファイバセンサ / ブリルアン散乱 / 非線形光学 / 防災技術 / 分布計測 / プラスチック光ファイバ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主な研究対象である分布型光ファイバセンシングシステム「ブリルアン光相関領域反射計(BOCDR)」の性能向上を中心に、次の各方面から研究を推進した。すなわち、(1) 非温度制御型レーザを用いたBOCDRの提案と測定精度の検証、(2) 光増幅機構を最小限に抑えたBOCDRの提案、(3) 傾斜利用BOCDRにおける歪ダイナミックレンジと空間分解能の関係の解明、(4) プラスチック光ファイバ(POF)に描画したファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)の更なる特性解明、(5) 極めて短いPOF中のモード間干渉の観測、などである。以下、それぞれについて詳述する。 (1) BOCDRでは、温度を一定に保持した半導体レーザが光源として使用される。しかし、安価な非温度制御型のレーザを用いても、自己ヘテロダイン検波の性質により従来の測定精度は保持され、システムの低廉化が促進されることを示した。(2) BOCDRにおける励起光や参照光、散乱光の増幅は、システムの低廉化・小サイズ化を阻む要因であった。そこで、要求される性能によっては、光増幅機構を抑えることができることを示し、実用化への道を拓いた。(3) 傾斜利用BOCDRにおいては、測定可能な歪の範囲(ダイナミックレンジ)と空間分解能がトレードオフの関係にあることを理論および実験を通じて明らかにした。(4) POF中に描画した一つのFBGによって、歪と温度を分離かつ同時に測定する手法を開発した。具体的には、FBGの反射スペクトルの複数のピーク周波数の歪や温度に対する依存性を取得し、マトリックス法を用いることで実現した。(5) 世界最短となる7mmのPOF中のモード間干渉を観測し、温度センサとして利用可能であることを実証した。点型の温度センサの実現につながるほか、反射型の構成にすることで簡易プローブとしての実用化の目途が立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、分布型光ファイバセンシングシステム「ブリルアン光相関領域反射計(BOCDR)」の実用化が大きな柱である。これまでに、本システムの性能を多方面から向上させてきたが、本年度は実用化のためのシステム低廉化・小サイズ化につながる重要な成果を複数得ることができた。この中には、性能向上を目指した実験をしているときに偶然得られた想定外の成果(半導体レーザの温度制御機構を撤廃しても測定精度は劣化しないという発見など)も含まれており、期待以上の結果を得られたと言える。これらの結果は10編以上の査読付き論文に掲載されるとともに、国内外での多数の招待講演や受賞にもつながった。また、本研究内容に関して共同研究契約を締結した企業とも実用化に向けた研究開発が進んでいるとともに、国外の複数の研究機関との共同研究によっても複数の論文が生まれた。以上の理由から、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、(1) 画像処理技術の導入に基づくブリルアン光相関領域反射計(BOCDR)の測定精度向上、(2) リアルタイムスペクトル取得によるBOCDRの動作速度および安定性向上、(3) ヒューズ現象後のプラスチック光ファイバ(POF)のモード間干渉の観測、(4) POFに描画したファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)の特異な性質の解明、などを考えている。以下、それぞれについて詳述する。 (1) 従来のBOCDRでは、各測定位置で取得した散乱スペクトルをローレンツ関数でフィッティングして、その結果得られたピーク周波数をその位置の歪や温度と対応付けていた。これに対し、各位置で取得した散乱スペクトルを測定ファイバに沿って並べたものを画像として捉え、画像処理分野で培われてきた技術を導入して信号処理を行うことで、より高い精度でのピーク周波数分布の検出が可能となると考えらえる。(2) 位相検波方式を除く従来のBOCDRは、波長掃引タイプのスペクトル取得に基づいており、動作速度が著しく制限されていた。これに対し、高速フーリエ変換によるリアルタイムスペクトル取得を用いたBOCDRを提案する。歪ダイナミックレンジの制限が課題であるが、ピーク追跡技術により克服できると考えている。結果的に、より高速な動作と安定性の向上につながる。(3) これまで、POFヒューズ現象を起こした後のPOFのセンシング応用を国外の研究チームとともに模索してきた。従来実現した方式は、透過パワーの変化に基づくもののみであった。そこで、POF中のモード間干渉に着目し、透過スペクトルのディップ周波数の変化に基づくより安定性の高い方式を提案する。(5) POFに描画したFBGの反射スペクトルの湿度に対する依存性を解明する。また、特異な反射スペクトルが現れる帯域を任意に制御できることも併せて示す。
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Research Products
(32 results)